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美童物語(2) (モーニングKC)

価格: ¥670
カテゴリ: コミック
ブランド: 講談社
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ウチナーンチュの“魂”を描く ★★★★★
第一巻のレビューにも書いたが、『砂の剣』等の初期作品で戦争に翻弄される沖縄の民衆の姿を描いた比嘉慂は、近年の『美童物語』のシリーズでは、ノロやユタなど沖縄独特の神女(カミンチュ)の周辺の物語を通じて、ウチナーンチュ独自の精神世界を描くことに傾注しているようである。この10月にも週刊誌上にシリーズ最新作が2本、発表されたが、そこでも「戦争」はもはや作品の中心モチーフではない。描かれるのは島人(シマンチュ)としての心のあり様や生き方であって、「戦争」や「ヤマトゥ−ンチュとの対立」は、その本質をより鮮やかに描き出すための触媒に過ぎない。

これは私のように沖縄の文化に関心を持つ者には嬉しいことで、個人的には初期の戦争そのものをモチーフとした作品群よりもこの『美童物語』のシリーズを高く評価するのだが、沖縄の文化に馴染みのない方々にはあるいは、『砂の剣』や『カジムヌガタイ』『マブイ』のような、事実をベースとした“戦争もの”から読み始める方が良いのかもしれない。そして戦中戦後の沖縄という過酷な状況の中で、なぜ、かくもしなやかに心美しく、そして逞しく、沖縄の民衆が生き抜くことが出来たのか、その疑問を抱きながら、この作品集を読むと良いだろう。

それにしてもここに描かれている沖縄の民衆の、何と気高く、豊かな精神世界を持っていたことか。

戦後60有余年、我々は社会の文明化に邁進するあまり、本来持っていたはずの高度に洗練された文化を失い、すっかり野蛮化してしまったようである。これは沖縄だけの問題ではなく、いち早く文明化に奔り、文化的荒廃を招いたのは、むしろ我ら、ヤマトゥ−ンチュの社会だろう。

そして作者・比嘉慂は、今やその沖縄においても失われつつあるウチナーンチュの精神文化を、コミックスという形式で現代の我々に紹介すると共に、長く後世に残そうとしている。この稀有な作家に出会い、その作品を読む喜びを得られた幸福を、私はしみじみと噛み締めたい。