定価から予想される3倍くらい内容が詰まってる。
★★★★☆
とにかく分厚い。巻末略年表や参考文献リストまで含めれば650頁超。それでも最後まで読まされた。
月刊PLAYBOYの05年10月号〜08年6月号まで33回の連載に加筆・訂正を施した内容だが、企画自体は02年夏にスタートしたともある(p29)。相応の準備期間もあり、構想もそれなりに練られたとは思う。とは言え3年間に及ぶ連載だから、自転車操業的になるのは止むを得まい。基本的には「人の話を聞いて書く」の繰り返しになっている。
聞いた話から更なる話の鉱脈を探り、また人に会って話を聞いて書く。だから一定の見通しに基づいて話が展開するのではなく、主題としては一応のクラスターを構成しつつも、微妙にあちらこちらに逸れていく。時には鉱脈を読み誤ったり、先に進めなくなる局面もある。ベタな感想だが、まさにチャンプルー。
本筋からは外れるが、佐野が一時期(おそらく70年代初期)、新宿歌舞伎町で「稼業」関係のタウン新聞編集に携わっていたことが語られていて興味深かった(p158)。裏世界に人脈を持っていることは、ノンフィクション・ライターにとっては大きなアドバンテージですよね。佐野愛読者からは「何を今さら」と言われるかもしれないが……
今後、「沖縄」理解のための必携本と云ってもよいのではなかろうか
★★★★★
極めて濃厚な味わいの一冊である。政治、社会(表と裏)、経済、芸能などなど、沖縄の戦後史を彩る事件と人物達がこれでもかこれでもかと繰り出され、その一件一件、一人一人が強烈な個性を放ち、読んでいて噎せ返るようであった。こういう読書体験はなかなか得られるものではない。
それにしても、様々な差別と抑圧委譲が生み出す「事大主義」(625頁)の風景は、われわれ日本人全体の近未来でもあるのではなかろうか。
任侠小説沖縄編
★★★★★
どこの地方でもあるやくざ話を、ここまでけれん味たっぷりに彩った作者の筆力に参った。
そうは言っても面白いのである。600ページを越える長編ルポは、肝心の取材対象の人物が
ほとんど他界しているにもかからず、関係者のインタビューで幽霊のようにまざまざと人物像が立ち上がってくる。
これは、やはり筆者の回りくどい表現のなせる業と言えよう。
読了後に巻頭の「はじめに」を再読されることをお勧めしたい。
巻末に「沖縄密約」のスクープをとった西山太吉氏へのインタビューを据えている。
この”悲劇のジャーナリスト”の威を借りて、筆者は大上段に戦後のメディア・日本人を切り捨てている。
しかし、巻頭の文にもどってみると、筆者独断の史観で「満州」と「沖縄」の二本立てを
無理やりこじつけようとしている支離滅裂ぶりが見透かされて、はたと冷静な思考に戻ることができる。
イエロージャーナリズムの見事な典型だ。
沖縄の真実
★★★★☆
大江健三郎の『沖縄ノート』には違和感を覚えていたのだが、本書は冒頭で大江健三郎の『戦争の被害をすべて引き受けた沖縄に謝りに行く』という姿勢に違和感を覚えると言い切っている。ノンフィクションとして大いに期待できる滑り出しである。
本書は600ページを超える大作であるが、ほとんどその期待を裏切らない。佐野眞一の著であるからアンダーグランド、怪人の取材は申し分ないし、基地問題の本質、基地にたかる人々、軍人の犯罪等についても、精力的なインタビューをもと客観的に描写している。
難点を言えば、金融について。本人も金融に弱いと自覚しているようだがが、沖縄金融については『模合』についてちょろっと書いてあるだけだ。アンダーグランドを書くならもう少し沖縄の金融を詳しく書いて欲しい。アンダーグランドを蠢く金の流れも沖縄の社会を語る上で不可欠な要素のはずだ。
表紙写真の女の子の表情に惹かれて買った
★★★★★
かわいいの一言で済まされない、怒ったようにも見える目に。
本文が面白くなければ表紙だけ壁に貼ればいいと思った
(いままでこういう買い方をした本はない)。
さて本文。
ステレオタイプでない沖縄の記事でどれも新鮮だった。
ヤクザ、ヒットマン、政治家、企業家、芸能人の話。
特に琉球独立党名誉総裁の野底土南の病室で、
同党の屋良朝助が琉球共和国の国旗を
野底に贈呈する場面は感動的だった。
その国旗は、青と紺のストライプで上下に2分され、
中央に理性・情熱・平和を意味する黄・赤・白の3つの星が
描かれているという。
この国旗をぜひとも見たいとおもった。
この本のおかげで沖縄を見る目が開かれた。
この本で知った、『ナツコ』、『照屋敏子』、『密約』、
『沖縄密約』そして『鉄の爆風』をいま読んでいる。