1987年以降のブルーノート録音から編集した13曲入りのコンピレーション盤。初期の録音からサラ・ヴォーン追悼作までの諸作からピックアップされている。ダイアンの魅力はなんといっても、そのスケールの大きな歌声にある。声量豊かで野性味たっぷり、しかも抜群のテクニシャンだから、聴いていて本当に気持がいい。音楽性の広さも特徴で、オーソドックスなジャズ・ヴォーカルはもちろん、アフロ～ラテン～ブラジル調のコンテンポラリー・ヴォーカルにも独自の世界を確立している。
   本作はそうしたダイアンの多彩な魅力を楽しめる内容。猛烈なシャウトから絶妙なバラード、フュージョン調の歌声と、実際ここにはさまざまな表情のダイアンがいる。なかでも2000年のライヴ盤『In the Moment: Live in Concert』からの<8><9>は、これぞダイアンというパワフルな歌声で圧倒される。最後の3曲はサラ・ヴォーン追悼作からの選曲だが、そのうち<12>は日本盤のみに収録されていたボーナス・トラックなので、アメリカ盤ではこれが初登場だ。（市川正二）