映画館を通して、日本映画界の問題を提起する
★★★★★
ミニシアター、
アート系作品が好きで同書を手に取りました。
作品タイトルは
「映画館のつくり方」となっていますが、
いわゆるシネコンでなく、街にひっそりと
たたずむミニシアターの作られた経緯と
現状について、地方を代表する映画館の
館主やスタッフの話を中心にまとめられています。
いずれも共通しているのは、
「東京で見れたアート系作品が
地方に行くと見れない。だったら
自分が映画館を作って見れるようにしよう」
そんな熱い思いに動かされ、
地元の寄付金で映画館を作ってみたり、
NPO法人化して映画館を作ってみたり、といった作り方と
いざ作ってみてから軌道に乗せるまでの苦労が赤裸々に描かれています。
私は以前名古屋に在住していたとき、
「東京でしか上映されない単館作品が多すぎる」と
同じような忸怩たる思いを抱く人間の一人でした。
しかし
今著に掲載されている今池シネマテークスタッフの発言によると、
「名古屋は他の地方と異なりアート系作品を上映する映画館が
多すぎるという別の問題もある」との発言。それが事実だとすると
他の地方は、もっと映画を観る環境が厳しいといえるわけで、薄ら寒い思いすらします。
映画は文化であり、
行政が援助せずに、
すべて民間に任せる
なんて考えられないと
あるフランス映画関係者は言いいます。
現在の日本の映画環境の
問題点の一片が垣間見え
考えさせられる珠玉の1冊です。