決して記憶から消えないラブストーリー
★★★★★
「ラスマンチャス通信」は全く肌にあいませんでしたが、
今著は、直球ストライクゾーンど真ん中に突き刺さりました。
クライマックスでは、通勤途中
電車内にて、零れ落ちそうになる涙を必死でこらえるほどでした。
単純な高校生の純愛になりそうなところ、
日本ファンタジーノベル大賞受賞作家の手腕を発揮。
読んでのお楽しみとさせていただきますが、
どちらかが消えてなくなる、しかも消えると
同時に、世界に残った人々の記憶からも消えてしまう。
そんな運命に必死に抵抗し
記憶にとどめようとする登場人物の
まっすぐな愛情の深さに胸がしめつけられて仕方がありませんでした。
主人公のタカシが心に決め歩み始めた道を
意識したわけではないですが、今著ももし可能なら
映画化とまでは言いませんので、映像化してもらえないでしょうか。
絶対に良い作品になると思います。そして、
観てくれた人すべての記憶から消えない作品になると思うから。。。
いつまでも忘れられない思い出を胸に。。。
★★★★☆
一風変わった青春恋愛小説です。
“消えていく”運命に立ち向かおうとする少年と、静かに受け止めようとする少女が対照的です。
清々しさを感じる一冊です。
切ない恋の話
★★★★☆
はじめは、特別でもない普通の出会い。
かわいい彼女を好きになり、どんどん親しくなっていく。
ところが彼女は突然消えてしまう。
最初は消えてもすぐに戻って来た彼女は、それからじょじょに消える時間が長くなり、
消えている時間の方が長くなっていく。
それどころか、彼女が消えるとともに自分の記憶からも失われていってしまう。
そんな中、どうにかして「忘れないと誓ったぼくが」いて、
彼女と彼女の記憶をつなぎとめようとする物語です。
題名からわかるとおり、ちょっと泣いてしまう切ない話。
でも彼女が消えてしまうのではないかと思いながらも、
なんとか彼女が消えないように、なんとか記憶がなくならないように、
必死で恋をした、彼の彼女の物語。
切なさを感じるとともに、
高校生のころの恋にも部活にも、何かと必死だった気持ちを思い出しました。
印象に残る物語
★★★★★
存在が「消える」という奇妙な病気にかかっている少女に恋をした少年が、彼女を助けるために大学受験や日々の生活を全て捨てて一生懸命になるところが切なかった。単に姿・形が消えるだけでなく彼女に接した人間も彼女が存在していなかったかのように感じるという発想もすごかったが、それをここまで分かりやすくまとめあげ、いかに彼が彼女のことを忘れないよう努力しているかがとてもうまく表現されていた。大好きな彼女のためにと頑張る彼に対して冷めた態度で接する彼女だが、それも全ては自分が消えたあとの彼を思ってのことだったのが分かる最後のシーンもとても感動的で印象に残った。
絶賛
★★★★★
他の人のレビューで、「ひねったセカチュー」と書いている人がいたが、なるほどそうかもしれないと思った。地味な「ぼく」がとびきり素敵な女の子と出会って(しかもなぜか向こうが積極的に近づいてきてくれる)、夢のような時間を体験するけれど、やはりそれは「夢」で、はかなく消えてしまうという……。そんな妄想めいた展開のお話を大まじめにされても興ざめだけれど、本書はある意味寓話(ファンタジー)としてひらきなおっているので作品としての強さがあるのだと思う。人の記憶はあやふやで、自分が最も大事に思っていることや人間のことすらしっかりと憶えていることができないということは誰にとってもそうであり、そのやるせない事実を誇張して描いている……という面もあれば、それが事実であるという裏付けがなくても、想像力とか自らの気持ち次第では大事に思う対象(2次元とか)を受肉することができるということを逆説的に語っている(つまりフィクションの力の肯定)という面もあるとも読める。ともかく、素敵な物語でした(主人公が、ドアーズの「まぼろしの世界」について言及した際、ヒロインが「あ、あれね」みたいにぴんときたところは、そんな女子いるかなとちょっと気になったけど……)。