公平で中立的で冷静、日本人論初心者には適当な本
★★★★☆
本の表紙には「中国人によって中国人のために書かれた日本および日本人の解説書」とあるが、
公平な立場で、中立的に、事実がが書かれているのか。先入観なしで読むべきである。
2010年10月、中国人民主活動家である劉暁波氏がノーベル平和賞を受賞
中国政府は「ノーベルは民族の団結と友好に貢献した人に対して平和賞を授与するよう望んだはずだと、
ノーベル賞委員会はノーベルの意に背き、中国で刑に服している劉暁波に授与した。
さらに、ノーベル平和賞の候補には中国の発展をぶち壊す人間の名が挙げられていた」と厳しく論評している。
西側メディアでも「今回のノーベル賞は中国という国家を否定するものである」という人もいるが、
中国という国家の人権運動を応援しているとも言えるのである。
と先入観バリバリのことを書いたが、この本は公平で中立的で冷静に日本人を見ようとしている。
特に指摘するのは「日本人の集団性」であるが、既出のキーワードである。
新しい見方が提示されるわけではないが、日本字をやり込めるという構成にはなっていないので、
他国人が書いた日本人論を何か読もうと思っている日本人論初心者には適当な本である。
中国人になったつもりで読んだ
★★★★☆
中国人のために書かれた本だ。
1章「集団至上主義」、2章「経済動物」では日本人への挑発的な表現が随所に見られる。
しかし3章の「島国日本」から客観的表現に変わった。 著者が成長したことが分かる。
借り物の改革と精神的支柱のない日本の姿をよく掴んでいる。
中国人になったつもりで読むと、
中国を含めアジアの人の日本に対する不安というものがどういうものかが分かる本だ。
現在の日本の閉塞状態の原因と進む方向が日本人からみても正しく予言されているからだ。
日本人の著書にはない発見が多々あり面白く読めた。
概ね冷静な分析ながら考察の浅い部分も
★★☆☆☆
日本滞在の長い著者だけに概ね冷静な分析であるが
「エコノミック・アニマル」の描写は一昔前のものの如くに感じる。
また古代文明を背景にした優越意識を未だに引き摺っていることや
我が国を「中国文化圏」の一員としたり
江戸時代の鎖国に至って漸く冊封体制から離脱したという見解は首肯できない。
しかしこの手の本を読むのに大切なのは
その主張の正否よりも
彼らがそのように認識しているという事実であろう(著者が市井の人だけに、中国13億人の代表と言えなくもない、という訳者の言は過言と思うが)。
また軍国主義復活(邦訳までのタイムラグからして原書執筆は小泉〜安倍政権期か)への抜き難い憂慮にしても
合衆国からあのような憲法を押し付けられて平和惚けした日本の我々には的外れの杞憂と言いたくなると同時に
我が国をあの無謀な戦争へと導いた者たちの負の遺産の大きさに暗澹たる思いを禁じ得ない。
しかしながら天皇陛下の戦争責任を云々することが立憲君主制における君主無答責への理解不足に他ならないこと
寧ろそこに規定された権能を超えて、いわば超法規的に下された御聖断こそが悪夢の戦争を終結させたこと
そして薩摩藩と清への両属関係にあった琉球を明治政府が編入したことを侵略呼ばわりされる筋合いはないこと
については日本国として明らかにしておかなければなるまい。
今上陛下を現時点で「平成天皇」とお呼びするのも諡号というものへの無知の表れであるし
著者の言う「ナショナリスト」が上陸したのは沖ノ鳥島ではなくて尖閣諸島の魚釣島であろう。
こういうところには正確を期して欲しかった。
特殊民族であることを実感。
★★★★★
日本の企業にお勤めをされたことのある中国人の方が
冷静かつ客観的な目線で書かれた本です。
子供大人を問わず他人と一つでも変ったところがあると
イジメられる社会現象、ひきこもりの蔓延
いわゆる閉鎖的かつ集団性の島国根性のこと。
海外で起きた事故の際の報道では日本人だけの安否を気遣う不可解さ
などなど…。
批判本に近いのでしょうが反省改善していかなければならない
日本人の課題が外国人の目を通して多く語られています。
ただ西洋崇拝アジア蔑視の傾向は本書執筆時よりも
薄れているとは思いました。
中国人による初の本格的な日本人論
★★★★★
日本人はとにかく日本人論が好きである。日本人論の古典中の古典といえば、アメリカの文化人類学者Ruth Benedictが著した“菊と刀”だろう。日本の文化を恥の文化と規定し、欧米の文化をその対極にあるものとして罪の文化と位置づけた有名な本だ。この本は1946年の出版であるが、その後、幾多の欧米の知日派と目される人たちが、その時々の日本を映し出した日本人論ないし日本文化論をものにしている。駐日アメリカ大使のReischauerのものや“Japan as Number One”で有名なVogelあたりが懐かしく思い起こされる。
中国も長い間、近代化がなかなか軌道に乗らず苦しんでいたが、ケ小平による市場開放策以後の発展はめざましく、日本も本気で中国に向き合わなければいけない時代になった。日本人論も、これからは欧米の人たちだけでなく、中国人によるものが増えていくと思われる。その先駆けとなるのが、本書である。日本は、昔から中国と交流があり、同じ漢字を使っているので、文化的にも近いような錯覚を持っている日本人が多いが、これが誤解のもとである。論語なんかでも、日本と中国の文化や社会の違いのために、日本の学者は大変な誤読をしている場合がよくある。是非本書を手にとって、中国人に日本はどのように映っているか、篤と御覧いただきたい。