新時代の労働運動
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ネオリベによって日本型雇用が解体され、派遣社員など非正社員が急増しつつある。福祉が薄く、非正規の賃金の規制する仕組みが存在しない日本において、そのことはそのままワーキングプアの増大を意味する。「貧困」や「格差」問題が叫ばれるゆえんであろう。
だが、本書に出てくる製造現場での派遣の実態はまだまだ知られていない。「偽装出向」に「偽装直接雇用」、そして虚偽の「募集広告」。企業の姑息さ、卑劣さにはあきれかえるばかりだ。また、そうした雇用形態が、それぞれの人の人生にどのような影響を与えるのかを顧みずに、「モノ」のように扱い、使い捨てるやり口には怒りを禁じ得ない。
だが、この深刻な事態の到来は、同時に新しい労働運動の幕開けでもある。そのことを端的に示しているのが、本書の登場人物たちであろう。彼らは、自らの不当な労働条件に抗議の声を挙げるだけではない。自分たちの闘いを足場にして、派遣業界全体の労働条件を改善していこうとしている。彼らの義憤に基づく普遍性を内包した闘いは、この深刻な状況にあっても、やはり希望なのである。
ぜひぜひお勧めします
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まさに日本のモノつくりの現場で何が起きているのかを知るには最適な本。
最近トヨタの車の生産台数が話題になっていたが、この本を読むとその自動車産業を支えているのが、派遣労働者をはじめ多くの不安定な雇用形態で働く労働者だということがわかる。
それだけではない、そうした派遣労働者が、どういう理由でこうした自動車工場に派遣で働くに至ったのか、そしてどういう場所で生活しているのかなど細かに取材されている。今の日本社会で話題となっている格差社会を考える上でも最適な本だと思う。
ただ、この本は単にかわいそうな労働者を哀れむ本ではない。彼らは、まさに今同じ非正規雇用で働く仲間のために闘っている。これからの日本社会を労働の現場から変えていく主人公のひとりを追うポジティヴな本ではないか。