エーちゃん海を渡る
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マガジンで連載中のテニス漫画。
今作は前作の難波江との試合の続きから始まります。
自らの基本ともいえるボールコントロールに立ち返る事で、ほんのわずかではあるものの、一筋の光がエーちゃんに差し込みます。
「全てのボールにおいつきそれをコントロールできれば理論的には負けない」
これまで堅実なテニスでこれを目指してきたエーちゃんですが、難波江に勝つために、より正確に、より攻撃的にこれを実践しようとします。
追い込まれ、敗れることで自らの目指すべきスタイルを見つけたエーちゃん。
やるべき事はあまりに多く、遺された時間はあまりに少ない。
知らず知らずのうちに、自分を追い詰めているエーちゃんに、二人の人物が待ったをかけます。
一人は、これまでも影ながらエーちゃんを見守ってきた親友の影山。
そしてもう一人は、新キャラである青井コーチです。
今のお前は理性が先走りすぎている。
理性と本能が同じ方向を向けば練習がより意味のあるものになる。
この漫画のいい所は、ともすれば少年漫画ではあっさりと済まされてしまいかねない「強くなるためのステップ」が、しっかりと理論立てて描かれている所です。だからこそ、読者はエーちゃんの努力の意味も、その成果もしっかり追うことが出来る。
彼のキャラ設定も相まって、本当にうまいなあと思います。
今回のエピソードは、まさにこの適例と言えるでしょう。
さて、タイトルの通り、今回エーちゃんはアメリカへと渡ります。
二週間のテニス留学。
青井コーチが「全日本ジュニア優勝の為の一番の近道」と推した結果です。
「テニスの事だけを考えて生きていける」環境を、2週間手に入れたエーちゃん。
この2週間を経て、次巻でどのような進化を遂げているのか、非常に楽しみです。
自分の特徴を生かすためのスタイル
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難波江優との対戦を通じて自らの目指すべきプレースタイルを自覚した丸尾栄一郎。しかし、彼に与えられた時間はあまりにも短く、目指すべき場所は遠い。少しでもそこに近づくため、自らに厳しい練習を課すのだが少し空回り気味。
そんな彼の前に現れた新コーチ青井竜平は、栄一郎に二日間の練習を禁じ、自分のやりたいことだけをやるように命じる。栄一郎の選んだやりたいこととは…。そして、強くなるために彼が選んだ先は、フロリダだった。
テニスのことはよく知らないけれど、これを読むとテニスは戦略をたて緻密に積み上げていく、詰将棋みたいなスポーツだなあ、と思えます。体育会系の勢いだけじゃなくて、勝つための思考ステップがよく見えるんですよね。