ディスク1は第1番と第4番。交響曲第1番は、やや速めの序奏で始まるが、風雲急を告げるドラマ性がある。第2楽章もやや速めで、モーツァルト風(?)の軽やかさが感じられる。そして聞き物は、じっくりと聴かせる第4楽章の序奏だ。雲間から少しずつ陽が差し始め、やがて雄大な自然が姿を現す。そんな情景が目に浮かぶ。主部もていねいな表現で、クライマックスは力感に溢れている。交響曲第4番第1楽章は、シャープな感じの表現が基調だが、展開部などでは、やわらかな表情も見せる。第2楽章も、大きなテンポの変動は見られないが、弦楽の弱奏などにきわめて繊細な感覚があり、非常に感動的。第4楽章は、後半に金管楽器が活躍し、なかなか劇的だ。
ディスク2は第2番と第3番。田園詩的な交響曲第2番は、トスカニーニには不向きなのではと思ったが、そんなことはなかった。第1楽章冒頭の四つの音符が、さりげない表情で奏されて始まる。可憐な第2主題の歌わせ方にもデリカシーが感じられる。第2楽章は、やはり少し速めで、瞑想的というよりは、ブラームスの豊かな歌謡性を貴んだ表現。第4楽章は、なかなか華やかで、ドイツの森林よりも、イタリアの農村の収穫の祭りをイメージさせる。交響曲第3番は、勇壮な第1楽章からして、男性的な力強さに溢れているが、冒頭のファンファーレのあとに弦楽がテーマを奏するところに、フッと力を抜く瞬間があったりして、嬉しくなってしまう。第3楽章では、中間部での木管と弦楽の応答など、悩める恋人たちの会話を思わせるようだし、主部に戻ってからの両者の絡みも絶妙のバランス。第4楽章でも、NBC交響楽団が底力を見せつけるような鮮やかさな演奏を繰り広げていて、かっこいいエンディングも、格調高くキメている。