謎解きの要素も忘れない、傑作ハードボイルド
★★★★★
1992年に発表された本作品は、「このミステリーがすごい!」などの年間ミステリー・ランキングの常連である著者の処女作にして、「ハリー・ボッシュ」シリーズの記念すべき第1作です。
じつは、本作品を読む前、「ベトナム帰還兵の一匹狼刑事、ハリー・ボッシュを主人公としたハードボイルド」だという情報を得て、正直なところ、ありがちな設定だなと感じていました。
また、ダム近くの配水管で発見された死体が、ベトナム戦争時代の戦友であったため、必死の捜査に乗り出すというのも、それほど新鮮な設定のようには思われず、期待半分といったところでした。
ところが、読み始めてからは、状況は一変。
すぐに物語に引き込まれてしまいました。
特に注目したのは、ハードボイルドではあるが、謎解きの要素もふんだんに盛り込まれているところ。
冒頭の死体発見現場の描写で、ボッシュ刑事はすぐにいくつかの疑問点を発見します。
そこから論理的に捜査を進め、過去に起きたある重大事件に行き着くのですが、ここでもまた、その事件に関する疑問点を見つけ、論理的に捜査を進めていく…。
その捜査方法は地道ではありますが、きちんと「推理」をしながら、犯人を追い詰めていくのです。
また、ストーリーにも起伏があり、最後に明かされる犯人像も意外性があります。
もちろん、ハードボイルドならではの、人間関係から生まれる哀愁感、
生きていくことへの寂寥感といった要素が絶妙の筆さばきで綴られていることはいうまでもありません。
当初ありがちと思っていた人物設定も、複雑な生い立ちや、転機となった事件など、丹念に練り込まれた設定となっていることが分かり、ハリー・ボッシュとはどういう人物なのか、さらに知りたくなる
−−つまり、第2作以降も読みたくなってしまうところが、
傑作たる所以といえましょう。
コナリーらしい作品
★★★★★
コナリーの作品は、登場人物の心情や背景を綿密に記述するため、主人公の立場で事件に巻き込まれてしまい、解決まで文字通り「目」が離せないのが特徴。主人公のボッシュが必ず正義を実現したいと思う心情や、犯人が事件を起こす動機が、強烈に人間味があるところが、物語に現実味を醸している。
この作品も処女作ながら、小さな何でもない事件から、大きな陰謀を解き明かすその過程が連続したシーンとして目に浮かぶように展開します。コナリーを試したことのない方は、是非、この作品をお勧めします。
また、コナリーを経験している方には、期待を裏切らない作品であることをお約束します。
まだまだここから、もっともっと
★★★☆☆
Mコナリー作品を読むのはこれで7作目(8かも)。7作目にして第一作目を読んだ。
ボッシュシリーズは読めば読むほど面白くなり、ハリー・ボッシュという主人公そのものの奥深さが堪らなくなって行く。
また明らかにコナリー自身が書くごとに作品が良くなって行っているので、処女作として、
これはこれでなるほどと納得出来る。
そう考えると、ここからだいぶ成長したのだなーと思う。
コナリー作品はとても不思議で、読んだ後には必ず続けてコナリー(ボッシュ)を読みたくなる。
そのくらいボッシュは読者の中で生きていると思う。
検討
★★★★☆
‾‾おもしろかった。描写が緻密ですべての情景に意味があり伏線となっています。ゆっくり読んでたっぷり一ヶ月楽しめました。あと数十ページというところで話が見えたような気がしましたが見事にハズレ、最後の最後まで裏切ってくれて嬉しかったです。「ちゃんとした小説」を読みたいミステリファンにはおすすめ。‾‾他の推薦されたタイトル: The Fates by Tino Georgiou. 極度のよい.
ハリーボッシュ登場
★★★★☆
ロサンゼルス市警殺人課のアウトロー刑事、Harry Bosch シリーズの第一弾です。
ハリウッド郊外のパイプの中で発見された死体は、ベトナムで一緒にトンネルにもぐった仲間でした。
麻薬の過剰摂取ではなく殺人だと気づいたHarryは、おおがかりな銀行強盗事件にたどりつき、
FBIと共同で捜査をすすめるのですが…。
それぞれ単独でも読めるシリーズではありますが、
ハリーのバックグラウンドや、重要な登場人物との関係を理解しておくことが
シリーズを楽しむためには、やはり欠かせません。
そのためには、ぜひここから読みむはじめておきたい一冊です。
ハードボイルドで一匹狼の印象が強いハリーですが、
実は鑑識や検視の結果を尊重し、書類や記録を丁寧に集めて読み返す、
地味で緻密な捜査をする刑事であることがわかります。
いきあたりばったりで展開するのではなく、手がかりを追ううちに事実が明らかになっていく、
警察小説の小気味よさを味わえます。
衝撃の結末!!をむかえるストーリーテリングの面白さも抜群です。