私は、元来エッセイやら紀行文というのは苦手であった。それは、たわけた警世や高踏的な考えが行間に見え隠れするからである。然るにこの本は、それがなくてよい。うす塩でもソースでもなく、しょうゆ味である。しょうゆ味なので、飽きずに通読できる。夏休みなどにまったりとソファに寝転がって読むと、幸せな時間を過ごせる本である。

自然をつぶさに観察し、好奇心旺盛の奥本先生。
その、流暢な筆遣いから、思わず私もその場にいるような錯覚を覚えます。
虫を追った旅行記などという、薄っぺら(失礼)な旅の記録などでは決してなく、自然・歴史・伝統・文化・食べ物から現代の風俗まで、読めば全てが判る観光ガイドブックのような機能も備えた、すばらしい逸品と太鼓判を押します。

奥本ファンならずとも、是非ご一読を！