2つの結末に対して著者が描くシナリオが印象的
★★★★☆
スティーヴン・ワインバーグの名著「最初の3分間」を受けた題名で、宇宙の最後の3分間はどうなるのかを一般読者向けに解説したもの。しかし、飽くまで予想の範囲内と断っている。熱力学の第二法則から、宇宙の死は必然だと言うが...。
最後を考察するためには、まず最初を考察する事が重要との事由で、ビッグバン理論に到った過程が、宇宙の膨張、宇宙背景放射、元素の存在比を基に語られる。この間、背景として一般相対性理論、量子論、インフレーション理論などが無理のない形で引用される。ここで重力(=質量)が持つ意味の大きさを改めて感じた。宇宙の終りについても理論的に、その膨張速度が速ければ宇宙内の全物質の累積重力から逃れて永遠に膨張し続けるが、速度が遅ければ膨張は最後には停止して収縮し始めると言う。
宇宙の膨張速度は赤方偏移の観測により測定出来るが、宇宙の総重量の測定は難事と言う。仮に宇宙の総重量を星の重量の累計とすれば、宇宙からの最小脱出速度は光速の約1%で、これなら無限に膨張し続ける事が可能である。しかし、ニュートリノ(静止質量はゼロに近いが、光速に近い動作をする上、大量(約100万個/1cm3)に存在する)の様な粒子、ダークマターの存在により、宇宙の総重量は未知だと言う。
いずれにせよ、宇宙はビッグクランチで完全に消滅するか、完全な無の状態が永遠に続くかの2つの結末しかない。これに対し、著者はやや希望的観測で人類(の子孫)がこの結末に対処するシナリオを描き出す。哲学的思想も込められている様である。ビッグバン理論も実は正確には理解していないのだが、宇宙の終りとなると想像の域を越えている。その宇宙の運命を平易な例と多くの理論の引用によって概説した魅力的な書。