第二次大戦時英国海洋冒険小説の不朽の名作
★★★★★
英国グラスゴーの無名の一教師だったアリステア・マクリーンを一躍世界的なベストセラー作家に変えてしまった彼のデビュー作である。
時は1942年か43年。独ソ開戦に際してソ連に軍事援助物資を輸送する船団を護衛するため、英国の老朽巡洋艦ユリシーズ号は、重い病をおして艦橋に立つヴァレリー艦長のもと、疲労困憊の730名あまりの乗組員を乗せて、英国北部のオークニー諸島のスカパ・フローを出航する。めざすは北極海を隔てたソ連の不凍港ムルマンスクである。しかし、7日間にわたってとうてい切り抜けるとことは不可能と思われるような危機が、次々とユリシーズ号に、乗組員たちに襲いかかる。
零下30度を超える厳寒の雪嵐の猛威、ドイツ軍の敷設した機雷、Uボートの魚雷、そして戦闘爆撃機による容赦ない攻撃、この想像をはるかに超える戦時下の苛酷な状況の中で、乗組員はひとり、またひとりと命を失い、32隻でソ連に向かって港を出た船団FR77も一隻、また一隻と沈没して最後には僅か7隻。「凄まじい」、「凄絶」、「呆然」、「轟然」、マクリーンの筆はとぎれることなく、高々とうねる荒波のごとくページを塗りつぶしてゆく。とうていハッピーエンドは望むべくもない。
また、忘れてはならないのが食糧と睡眠もままならないユリシーズ号乗組員たちの英国海軍軍人としての矜持とジョンブル魂、そして友情と連帯である。
私は物語の終盤の戦闘シーンでシチュエーションは異なれど、福井晴敏の大作『終戦のローレライ』を思い起こした。
ともあれ本書は、55年前に書かれたのが信じられないほど、リアリティと悲壮感に満ちた第二時大戦時英国海洋冒険小説の不朽の名作である。
面白いが..
★★★☆☆
面白い.しかし、が付く.極寒での戦い?だが、非常に解りづらかった.私にはこういう小説は苦手である.翻訳も、やや硬いように思われた.
言葉にならない感動
★★★★★
こんな名作に今更自分が感想など書くのもおこがましいですが…
読んでいてこんなに気持ちが昂ぶった小説というのは記憶に無い。自分が読んだ小説でも3本の指に入る。というか、読後しばらくは完全にベスト1でしたよ。一生手元に置いておいて、何度も読み返したいと思う一冊になりました。
この物語はフィクションですが、実際に自分の目と心で、乗組員たちの壮絶な戦いと、勇敢さと、葛藤と、そして悲劇を全部実際に目の当たりにしたような気持ちになったんです。優れた小説の持つ魔力なのでしょうね。
そんな素晴らしい作品に対して、自分の拙い言葉で感想を説明するのは無理な話です。読めばわかるのです。
荘厳さすら覚える
★★★★★
アリステア・マクリーン デビュー作(1955年)
第2次大戦時の英国援ソ船団とその乗員たちの7日間を描いた作品。主役はあくまでも乗員たち=人なのだが、疲労困憊状態での出航から、ものがたりは始まる。あまりに厳しい自然の猛威や、執拗な独軍の攻撃にさらされ、ひとり、またひとりと斃れていく。厳寒の、大海原での爆撃の描写は秀逸で、目前に起こっているがごとく恐怖を感じてしまう。
作品の中では、大戦ものにありがちな正義や悪、反戦、英雄は語られていない。乗員たちの闘いも、祖国や家族のためといった大儀ではないとしている。実に現実的だ。餓えと寒さ、慢性的な睡眠不足、張りつめた精神状態を超え、乗員たちは作中でいうところの”亡者”となって、目的に邁進していく。
目の前の難関を乗り越えることを使命として、命を賭すしかない人々には、読み進めるうちに虚しさより荘厳さすら覚えてくる。
本作品は、名作との評価が高い。他人の意見に同調するのはしゃくではあるけれども、確かに名作である。
いままで何十回読んで、これからも何十回も読むだろう
★★★★★
残りページが少なくなるのが惜しい。そんな小説のひとつです。30年近く前に買った文庫本はカバーが破れ糊付けも剥がれてきました。バラバラになったらまた買います。
内容については私の少ない語彙よりも他の皆さんが見事に書かれています。
極限状況に置かれた不撓不屈の男達の物語に浸ってください。
全部好きなんですが、思わずニヤッとしところ。
暴風で曲がった飛行甲板について艦長が「艦隊司令官宛の電文」でとばすジョーク。
さすがジョンブル!