前期≪ハイペリオン≫2部作の、完結編です。
★★★★★
≪ハイペリオン・4部作≫は全4部からなる超大作ですが、第1部『ハイペリオン』と第2部『ハイペリオンの没落』で、一まず物語は完結します。第1部『ハイペリオン』において提示された数多くの謎が、第2部『ハイペリオンの没落』によって、見事に解決されます。一見、神秘主義的な色彩を帯びた数多くの謎が、全て科学的かつ合理的に解決される所は、まさに≪正統派サイエンス・フィクション≫の傑作と言えるでしょう。この後、第3部『エンディミオン』と第4部『エンディミオンの覚醒』においては、全く違う物語が展開されるようです。今私は、第3部『エンディミオン』を読んでいますが、こちらも非常に面白いです。いずれにしても、この≪ハイペリオン≫シリーズ・前期2部作は、これ自体で完結した大傑作なので、SFに興味のある方にはオススメします。
マクロの物語とミクロの物語のタペストリー
★★★★☆
宇宙の蛮族・アウスターの侵略から〈時間の墓標〉を擁する惑星ハイペリオンを守るべく、連邦首星タウ・ケティ・センターからFORCE(連邦軍)無敵艦隊が出動した。この突発的に起こったかに見える戦争は、実は〈テクノコア〉による人類支配に懸念を感じた連邦CEOマイナ・グラッドストーンが、ハイペリオン併合のために意図的に仕組んだものであった・・・! グラッドストーンは、〈テクノコア〉の人格復元プロジェクトによってジョン・キーツの人格を与えられたサイブリッド、ジョセフ・セヴァーンを通じて、巡礼たちの動静を探ろうとする。
一方、ハイペリオンでは、連邦の密命を受け、また各々の思惑によって巡礼に参加した男女が、ついに目的地〈時間の墓標〉に到着した。彼等は1人、また1人と、〈苦痛の神〉シュライクと邂逅する・・・・・・
傑作SF『ハイペリオン』の続篇。異なる境遇に生まれ異なる目的で〈時間の墓標〉を目指す巡礼たち個々人の物語に焦点を当てた前作に対し、本作では狂言回しとして「神の眼」を持つバイオロイドたるジョセフ・セヴァーンが加わり、巡礼たちの苦闘のみならず連邦中枢での政治情勢も同時進行的に語られていく。前作では断片的に提示されただけであった銀河連邦史が徐々に明らかにされるところが面白い。前作のおさらい的な説明も多く、読者に親切な作りとなっている。
それにしても壮大にして緻密な舞台設計には、物語が進めば進むほど感心させられる一方である。〈テクノコア〉という温室に依存した結果、快適な生活と引き替えに活力を失った連邦と、〈テクノコア〉の軛から脱して独自の進歩を遂げるアウスターを対置するという構図は、アシモフのイライジャ・ベイリもの(ロボット長編3部作)の影響を受けているのだろうか?
ハイペリオンの解決編
★★★★☆
ハイペリオンシリーズの第二部。
ハイペリオンは巡礼の旅に出た7人が自分の話を一人ずつ語っていくという千夜一夜物語形式で、どの話も最高に刺激的でおもしろかった。
ただ、ハイペリオンは謎が謎のままで、巡礼の旅自体が終わっていない尻切れトンボでした。
前作の巡礼の旅の続きに、アウスターの連邦への本格侵攻という物語がかぶさった形で巡礼の旅と同時進行で進んでいきます。
対アウスターの指揮を執る指導者は、前作から登場していたCEOマイナ・グラッドストーン。CEOから今回の物語の狂言回し的役に抜擢された主人公は、ジョン・キーツのサイブリッドのコピー人格M・ジョセフ・セヴァーンです。
この巡礼外の物語と、巡礼の話が交互に入れ替わりで場面転換して進行していきます。
この後の「ハイペリオンの没落(上・下)」でハイペリオンの話は完結します。
前半は、話がかったるくて何度本を置こうかとおもいましたが、もやもや感があったのでなんとか最後まで読みました。
「雲門」との禅問答あたりからまたおもしろくなってきて、後半は謎解きが一気に進んでいって読んでいて気持ち良かったです。
結論が出たことに私としては満足しました。
その後に書かれた「エンディミオン(上・下)」「エンディミオンの覚醒(上・下)」まで含めて読むと真の完結という形で、より満足すること請け合いです。
どっしりとした大作
★★★★☆
詩人ジョン・キーツのサイバークローンを主人公にした
どっしりとした大作で、ストーリーが散漫しないので、焦点が絞られて、没頭出来る。
ラストの方の小松左京や光瀬龍ぽい
高次元の宗教がかった存在との対話は、これぞSFやねと感動した。
オーバーロードにより、マゼラン星雲に作られた偽地球に、
たった一人で住むことになるジョン・キーツのイメージは印象深い。
キーツの為だけに、19世紀の地球を創造するのだ。
神が無限の能力を持つのなら、個人の希望の世界を、
気前よく創造してやればいいのに、
私が認めた人しか天国には入れませんと、差別して入場拒否する神って、
心の狭い存在だと思います(藁
辺境の蛮族・Ousterが優雅で美しい
★★★★☆
いきなりHegemonyと辺境の蛮族・Ousterのハイペリオンをめぐる大戦争が始まるところから、この後編は幕があきます。
この作品は三部構成になっていて、多少なかだるみのあった第一部が終わり第二部にはいると、「Hyperion」で親子の愛情を切々と語った第四話の「学者の物語」のその後を中心に話しがすすみ、学者・ソルが娘・レイチェルを怪物・シュライクにささげるラストまで感動の連続でした。特に"Say yes, Daddy."(イエスって言うのよ、パパ)の台詞には涙ぼろぼろでした。
さて、Googleが発達するとこうなるのかとおもわせるTechnoCoreがどこに存在するのか、TechnoCoreとはいったい何者なのか、こちらは本当に意外な結末に唖然としました。いずれにしろ、インターネット勃興前夜の1989年と1990年に書かれた、インターネット時代を先取りした素晴らしい小説と言えるのでしょう、少なくてもHegemonyと辺境の蛮族・Ousterとの戦いの結末については。
しかし、エピローグの直前の章・第45章で巡礼たちの運命について、意外な話しの展開があるのですが(これについてはなんの前触れも、伏線もありません)、それが私にとっては、ちょっととってつけたような結末という印象を持ちました。(残念だな〜) 巡礼たちの運命にかかわる最後の二章は、もっとページをつかってしっかり描き込んで欲しかったと考えています。で、ここで一点減点です。
私の好きな場面:
辺境の蛮族・Ousterが奏でられる音楽の音色とともに初めて登場する場面は、「Hyperion」二部作のなかで飛び抜けて出色のシーンです。ダン・シモンズによって描写されるこの辺境の蛮族の優雅で美しいことといったら、まるでビスコンティの映画のワンシーンをみているようで、それこそ一幅の絵画だったと言えるでしょう。