1章で曲線について触れて読者に準備をさせた後、2章から曲面論に入ります。先ずは斜交座標系を用いた議論を進めますが、それを一通り終えた後、直交座標系(動標構)で同様の計算を行い、それによる方が如何に見通しがよいかを示しています。ここで微分形式が導入されますが、このあたりも誠に丁寧に説明されます。
3章では、第一基本形式だけに基づく議論、つまりRiemann計量を用いた内容が展開され、共変微分や測地線が説明されます。4章では、本書の目的でもあるGauss-Bonnetの定理が説明されますが、1章の曲線に基づく議論が対比となっているのが見事です(素人ですので!的を得ていないかも知れません)。
本書は、著者の初めての日本語での数学書、とのことですが、確かに通常の日本語による書物とは異なった趣を持っています。例えば、軽快なユーモアや、口語調の多少くだけた解説が散りばめられ、読者を引き付けています。日本語による数学書はともすれば無味乾燥のものが多いのですが、本書は全くの例外と言えます。
尚、本レビューは旧版に基づくものです。新版では極小曲面の章が追加されていますが、旧版を手放すことができず、未だに購入しておりません。