サリエリ、テレーゼ、ラズモフスキー、ディアベリらの肖像画を初めて見ましたがな
★★★★☆
新潮社からのシリーズ、作曲家毎に著者が違います。このシリーズの「ブラームス」では、主要作品やターニングポイントとなる作品を時代背景と共によう分からせてくれたんですが、本作はあまた存在するであろうこの楽聖の伝記を適宜ピックアップした(ただし、かなり細かいことも記載されており、音楽史的ともいえる)ような作。写真が挿入されている点が特徴で、普通の伝記とは違うところですけども、これまた「ブラームス」では写真の前後で本文の切れ目となっているのが、本作は写真を挟んで文章が続いている箇所が多く、ページを行ったり来たりで読みにくい。
1824年5月7日の第九交響曲初演での儲けが期待はずれであったため、演奏会後の慰労会は「不機嫌になっていたベートーヴェンのやるかたない憤懣の爆発となった。彼の怒りは劇場管理者とシンドラーが収入をごまかしたというもの」、「ベートーヴェンは二日間の昏睡から覚め、両目を見開き、右手拳を振り上げ、それから一点を見つめたまま手を落とすと同時に、目を半ば閉じて永遠の眠りについた」とか、大変面白い記述がある代わりに、同じ新潮社の諸井三郎氏の本に較べ正確さに欠ける記述もあります
「楽聖」の苦難の生涯
★★★★☆
「楽聖」といわれた偉大なる音楽家ベートーヴェンの生涯をコンパクトにまとめている。後世に残る数々の名曲が作曲された背景がわかりやすく,かつ客観的に描かれている。失恋や難聴,親族との問題などに心痛めながらも難題を克服してそれが使命であるかのように名曲を創造する彼の姿は,まさに超一級の音楽家である。
手軽なベートーヴェン像の解説書
★★★★☆
作曲家の生涯を紹介する新潮文庫のシリーズ。様々な資料や研究、残された手紙などからベートーヴェンがどのような生活を送り、作曲していったのかを探っている。作品の一つ一つがどのような状況下で作られたか、誰のためにかかれたのかなどがよく分かる。
また、失恋、病気、人間関係などが感情移入することなく、客観的に書かれているので、事実をよく把握できる。CDのライナーノーツの長編みたいな感じだ。写真や絵も多く、ベートーヴェンが関わった土地、交友関係、建物などが沢山使われているので文章と合わせながら、「こんな人かあ」などとと見ることが出来る。作品を聴いた上で読むと当時の背景がよく分かるだろう。
ただ、感情移入していないのと、ベートーヴェンの苦悩などを推測したり、意見をあまり述べたりしていない分、ベートーヴェンの心理状況についてはわかりにくい。あくまで最新の研究を元にベートーヴェン像を外側から捉えた解説書である。
文庫本という手軽さもあって、ベートーヴェンを聴いて少しでも人物像に興味を持ったのなら、読んでみてはいかがでしょうか。
ちなみに私は、もう少し心理に迫るドキュメントのような文章の方が好みなので、星一つ削りました。例えそれが、著者の志向や意見のようなものであっても。