著者のナポレオン・ヒルは、鉄鋼王カーネギーの発案に乗り、20年間無報酬で「成功哲学」を徹底的に研究した。カーネギーが見込んだ500人をインタビューし、彼らが成功していく過程を子細に追視。そこに共通する“思考”と“やりかた”を体系的にまとめたのである。驚くべき偉業である。この本は、なぜ「あなた」が今の「あなた」なのかをやさしく教えてくれる。不安の種を取り除き、未来を自分の思う方向に切り開いていくすべとともに。
確固たる願望を持つこと、決断、信念、忍耐、マスターマインド、計画の組織化が成功の扉を開ける鍵であると説き、「欲しいものを知れば、それは得られる」「他人を傷つけてまで成功することほど、愚かなことはない」という。そして「勝利者は断じてあきらめない」とも。リンカーン、O・ヘンリー、フォードなどが、それぞれが持っていた負の面をいかに克服し成功し得たのかは、わかりやすい事実であるだけに心にずっしりくる。
読み進めていくうちに、アメリカ合衆国がなぜ繁栄の現今にあるかがあぶり出されてくる。彼らは先人の成功の哲学をまじめに学んできたのであろう。誰もが必ず成功できると心得ているのだ。自分を知り、明確な目標を掲げ決断しさえすれば。
本書はベストセラー『金持ち父さん貧乏父さん』の原典なのであろう。(本所 凱)