異文化の深みへ
★★★★★
とにかくたくさんの本の量であり、それを力強い流れで追っていきます。千冊を概観していく過程で、新たな読書ジャンルを発見できるんじゃないかと思います。
ブックガイドという観点から言えば、本を押し付けてくるのではなく、全体の流れから自分で選べるように導いてくれるので、あまりうるさくない点がいいところかと思います。読者の自由度が高く、それでいて参照するときには参考になります。ただ松岡さんになろうと思ってもしょうがないので、この本全部読まなきゃ、とはまったく思いませんが。
千夜千冊はすごいんですけど、買えないんですよね。そういう意味ではwebの方が便利で、この虎の巻、そのwebの補完資料としても使えると思います。むしろそうやって使うのがふつうなのかもしれない。最後に少し引用を。
いま、環境のバランスとか、格差社会の是正とかいったことが世界全体を覆っているけれど、真に重要なのは二つ以上の焦点をもった歪んだ物語のぶつかり合いを、誰がどう表現できるかということなんです。バランスばかり気にしたり、格差をなくそうとばかりしたんじゃ、何も創発しない。・・・p.303
高速ツーリング
★★★★☆
本当は『千夜千冊』を購入したかったのだが、10万円という価格に尻込みしてしまい、『虎の巻』になってしまった。しかし、当代屈指の編集者であり思想家でもある松岡正剛がインタビュー形式で「すべてを語る」という試みにすっかり嵌ってしまった。まさに読書案内「高速ツーリング」(松岡氏の弁)である。ただ、ちょっと触れてみるだけというのは酷である。欲求不満は隠せない。結局、「全7巻+特別巻」を買うことになりそうだ。こうした流れを生み出すのも編集工学のなせる業なのか?
読書の理論
★★★★☆
編集工学の提唱者、松岡正剛の読書術の秘密を探ることで、よりよい読書のあり方を身に付けることができます。読書好きな人ならば共感できることが多々あるはず。
偉業に敬意を表して
★★★★★
同じ会社で出している、『松岡正剛 千夜千冊』の入門書みたいなものか。
松岡さんの見解が妥当かどうかはわからない(千夜千冊で紹介されている本を全部読んだわけではないので判断できない)。また、松岡流の方法論の採用を勧めるわけでもない。しかし、(1)1,000人以上の著作を読んだこと、それを平日(土日を除く)に5冊紹介して1,000冊以上紹介したことは偉業である(もっとも、新たに呼んだのは300冊ぐらいだそうだが、偉大さにおいて影響はない)。(2)内容も多岐にわたり壮観、(3)リストもついており便利、以上3点より、星5つとする。
特別付録だけで元が取れる
★★★★★
仕事場の本棚に五、六万冊の本があるという「知の巨人」松岡正剛。一人の著者につき一冊だけ選ぶという方針で始めた「千夜千冊」というウェブ連載が大幅加筆修正の末「書物」になった。7巻に編集した全集「千夜千冊」のリストを見て、松岡氏にインタビューするという企画が本になったもの。
「本を読むとは、その本を通して未知の世界や未知の人間と接触したということ。・・・読書は交際なんです。・・・読書はいつ、どのように、どのようなコンディションで読んだかということがリアルタイムにおこった出来事なんです。」「絶対に再読すること。これは絶必。そこに読書の醍醐味がいくらでもひそんでいますね。」「本をノートにする。」「著者の人生はできるだけ知ったほうがいいね。」「(日本の古典五冊に、)ぼくは迷わず『雨月物語』を入れる」「『リア王』『パンセ』『エチカ』が三種の神器」「『カラマーゾフの兄弟』でしょう。ぼくはこの作品を読まないですませている文芸者や宗教者を、とうてい信用する気になれないね。」「読書はリラックスするときも、忙しいときも、悲しいときも、疲れきっているときもすべてがチャンスなんです。」暗号読書法は、「プロトタイプを使って読むという方法・・・二つの対比しあう概念やタイプを並べて論じている本を下敷きにする・・・『千夜千冊』のヘッドラインを参考に」目次読書法は、「目次をアタマに入れる・・・(次に)各章の最初のところとか、その章の流れのなかでちょちょっとキーワードのようなものを追うだけです。」マーキング読書法。要約読書法は、「各章をそれぞれ三ヶ条にまとめるということをする。・・・そもそも読書するとは(中略)要約するということ」図解読書法は、「要約三ヶ条をちょっとしたフローチャートやダイヤグラムにする。」「(一番身につまされた本は、)大原富枝の『婉という女』です。」