草原の国
★★★☆☆
初出は1973-74年の『週間朝日』。
「モンゴル紀行」が収録されている。
取材当時、モンゴルは近付くだけでも大変な国だった。船でハバロフスクに渡り、陸路でイルクーツクへ、そこからやっと飛行機でウランバートルにはいることが出来たのである。飛行機の発着や運行時間もいい加減で、かなり苦労している。が、そこが面白い。
本書のテーマとなっているのは、都会であるウランバートルと、その他全部である無限の草原の対比である。鮮烈な印象が与えられる。
ソ連や中国との歴史的・政治的関係に言及されている点も興味深い。国民的英雄であるはずのチンギス・ハンは、当時の友好国ソ連にとっては侵略者に当たるから、名前を出すのも御法度だったという。
草原の民の超人的な能力も凄い。視力、情報の伝わり方の早さ、馬での移動の便利さなど。