大好き。いまいちばん好きな作品です。
★★★★★
ずっと連載で読んでいます。最初はフツーの文科系青春マンガかなと思っていましたが、2巻の途中くらいから登場人物の内面を掘り下げはじめて、それで一気に好きになりました。
ここがすごくいい! とおもうところを2つ挙げます。
ひとつめ。わたしたちは日常の中でいろんなものに出会い、いろいろなことを感じているわけですが、多くの感情はそのときかぎりのものです。ちょっとした違和感、なんとなく嬉しいことなど、自分でもその理由に気づかないまま、生まれては消えていってしまいます。ある種の作品は、そういう日常的な感覚をうまく拾い上げてくれていて、「ああ、いままで言葉にできなかったけど、こういう気持ちになることってあるよね!」と思わせてくれる。ただそれだけでも、その作品は十分にすばらしくて、ありがとうという感じになります。
ふたつめ。作者の方は、<疾走感><浮遊感>みたいなものに、こだわりとするどい感覚を持っているように感じます。この作品のはじまりは、主人公が「空を飛ぶ」アニメに感激するところでした。また物語中のカギとなるシーンには、<疾走により世界の見え方がかわる>モチーフが出てきます。1つは、主人公と親友の中学校時代のエピソードで、二人が手をつないで逃げ出すシーン。もう1つの例は、ハタノさん(というおとなしめの女の子)が、主人公の部室を除いたあと、自己嫌悪して周りが見えずに歩いていくシーン(生徒会の人とぶつかる前です)。こういうとき、主観的な体験として、世界が魚眼レンズから覗いたみたいになって、ふだん見慣れた景色の見え方ががらりと変わる。この点を、さり気なく、しかし非常に効果的に描いていて、スゴイ!!!とおもいました。
おもしろさが伝わったかどうか分かりませんが、たとえば「このマンガがすごい」の上位に来る作品よりも、いまはこの作品がいちばん好きです。俄然おもしろくなってくる2巻まで、是非読んでみてほしいとおもいます。