医師の書いたシステム生物学
★★★★☆
児玉教授は言わずと知れた、スカベンジャー受容体を発見した研究者兼医師である。システム生物学の本は数あれど、臨床も知っている医師が書いた本は少ない。その点で、この本は臨床的意義も十分視野に入れたシステム生物学の入門書として医師にも参考になると考えます。同じ児玉先生の岩波新書もあわせて読みたい。
”制御系”という考え方
★★★★★
今までの医学モデルでは、一つの遺伝子、一つの細胞と、独立した単体だけを見
る傾向がありました。
システム生物医学では、複数のタンパク質、遺伝子、酵素などが織り成すネット
ワーク、相関性、複雑な制御システムからなる”ダイナミックな有機体”という
観点から生物を捉えます。
これにより、今まで対処の難しかった生活習慣病等の新たな治療の可能性を開
きました。
”入門”と書いてあるだけあって、思ったよりも読みやすかったです。
医学に携わる人だけでなく、人体に関連する諸学問を学ぶ人にも、
「数百、数千の制御系のはたらき」という視点を得ることは有益だと思うので、
一読をお勧めします。
読み応えのある「入門書」です。
システム生物医学への誘い
★★★★★
~ 多様な生物種のゲノム配列情報が明らかとなり、それに引き続く大規模トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム解析が活発に行われている。時間的、空間的に生体内のダイナミックな変化を検出するこれらの研究手法は、美しくも複雑な生命の根元的なメカニズムを解き明かしてくれる可能性を持つ。
しかし一方で、得られる情報量があまりに多様で~~膨大であるため、どのように得られた情報を処理し統合するかに茫然自失となるのもまた事実である。特に新しくこの分野の研究を始めようとする初心者にとっては、どうにもつかみどころがないのが実感ではないであろうか。現状ではシステム生物学の分野において、その人材を育てるソフト面が遅れていると言わざるをえない。
本書は題名の通り、いかに得られ~~た生体情報を統合しネットワークを構築していくかについて、その概念や実際の応用例を示しながら初心者向けにわかりやすく解説している。今後疾患研究などを中心として、強力なツールになるシステム生物学を学び始めている初心者に、特にお薦めの一冊である。~