簡潔で分かり易いsystems biologyの入門書
★★★★★
内容を抜粋すると (原著英語版のレビューです;)
1. Network motif
生体分子の相互作用(転写制御やシグナル伝達など)が作り出すクモの巣の
ようなネットワークの大部分が、少数のシンプルなパターン="network motif"
の組み合わせで構成されている、という一例を示し、それらが持つ意味を、
時には制御工学の理論を引き合いに出して推測。
進化の長い歴史が極限まで研ぎ澄ましてきたネットワークが、工学の現場で
鍛え抜かれてきた理論を"使っている"不思議さ、美しさを垣間見ることが出来ます。
2. Robustness
入力のゆらぎや大きなノイズに対抗するため、生物は効率をある程度犠牲に
して冗長なシステムを採用。驚くほど精密なアウトプットを可能とした。
例:morphogen gradientの形成、bacteriaの走化性。
3. Kinetic proofreading
生体内の分子スープの中で、解離定数がほとんど違わない分子の中から
目的の分子だけを驚嘆すべき高精度で識別する仕組みを、翻訳機構や抗原認識
を具体例に、"kinetic proofreading"という概念を使ってわかり易く説明。
4. Demand rules for gene regulation
ハウスキーピング遺伝子はactivatorによって、滅多に発現しない遺伝子は
repressorで制御されていることが多い。なぜか?それを"error-load"という
概念を用いて説明。
しつこいくらいの要約、ちょっと手強いExcercisesが満載で、読み終わった頃
にはシステムバイオロジー脳になっていることでしょう!
分子生物学・数学に関して必要な知識は大学初級程度。他には反応速度論と
熱力学的平衡の基礎くらいですが、それらのintroductionが巻末にappendix
としてまとめられています。
原著である"An Introduction to Systems Biology"は、とても綺麗な英語で書
いてあります。余裕があれば、そちらにもチャレンジしてみては?!