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姥ざかり花の旅笠 小田宅子の「東路日記」 (集英社文庫)

価格: ¥740
カテゴリ: 文庫
ブランド: 集英社
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題材は面白いが ★★★☆☆
「天ざかる鄙の地、商賈の家の女たちに、こんなにみやびでゆた
かな文化が息づいていたとは」と著者が述べるとおり、大変興味
深い題材。ただし、その旅日記を淡々と起伏なくひもとき、さら
りと味わいをつけるだけで、物足りなくも感じた。
エネルギッシュで教養のある江戸の女性 ★★★★★
天保11年(1840年)、九州筑前の商家の52歳の主婦・小田宅子が友達数名および荷物運び兼ボディーガードを勤める男の使用人3名と連れだって東国への旅に出る。

この旅は宮島、讃岐、大阪、京都、奈良、信州善光寺、日光、江戸、など5ヶ月に及んだ。本書はその時小田宅子がしたためた旅日記「東路日記」に基づいている。

当時の旅の有様が田辺聖子の軽妙かつ深い教養に裏打ちされた筆で描かれていて大変興味深い。当時、女が長旅をするということはどういうことがよくわかる。

特筆すべきは、宅子さんと友達が行く先々で和歌を詠むことだ。現代はデジカメのシャッターを押すだけだが。当時の女性の教養は今より高かったのではなかろうか。

さらに、宅子さん等がお詣りした信濃善光寺について田辺聖子の筆にとくに力が入り、善光寺学とでも名付く一編をなしている。

また、小田宅子は俳優の高倉健の御先祖様だということも紹介されている。

「東路日記」はこの歌で終わっている:
 
  今日とてはぬぐや信濃路東路の
    花にも馴れし旅の衣を  宅子 

この旅の20年後に桜田門外の変があり、40年後に明治維新になる。
田辺聖子の代表作(の一つ)! ★★★★★
田辺聖子ほど多彩で博識な人はいないのじゃないか、と思うくらい随所に知性を感じさせる本である。それが嫌味じゃないところが、いい。俳優の高倉健さんのご先祖の商家のお内儀が、友人たちと3人連れ立ってお伊勢参り。田辺聖子は、実在の旅日記に残された、立ち寄るあちこちで詠む和歌にいちいち本歌を示すなど注釈を加え、品のいい読み物に仕上げている。いきいきと見事に描く、江戸時代の女性のバイタリティ。女性らしい奥ゆかしさと恥じらいも感じさせる旅のいろいろ。一気に読むことなく、5ページでも10ページでも、少しずつ少しずつ奥行きを感じながら読めば、その方が余韻が楽しめる。田辺聖子でなければ書けなかったであろう、素敵な旅日記である。ぜひオススメしたい本の第一番手!
旅日記 ★★★★☆
随所に和歌が出てくるのですが、和歌にあまりなじみが無くてもとても楽しめました。江戸庶民のエネルギーを感じられる旅日記で、昔も今も中年~初老の女性の旅行熱、カルチャー熱はかわらないんだなぁと思いました。
主人公の交わすふんわりとした言葉もとても心地よかったです。
道中記読みにとって貴重な教導 ★★★★★
田辺聖子の作品は、明るい華やぎがあって好きである。この作品の主人公宅子も、聖子好みの、堅実な中にも艶めいた女性に思われて、好感度抜群に紹介されている。

 宅子の「東路日記」のおもしろさは、その歌にあろう。訪ねる土地土地の地霊への感謝を込めた歌は、伸びやかで素直である。「万代も思ひやられて丸亀の城はゆたかにかすみたなびく」。一方、古典を踏まえた歌は、重畳する文化の堆積を詠み込みながらも、一種のユーモアも感じさせる。「ものがたりかきしむかしをしのぶかなこの山寺に須磨も明石も」石山寺で紫式部をしのぶ歌である。この寺で「須磨・明石」の巻も書いたであろうなあ、という詠草である。何げない感慨のようだが、古川柳の諧謔味があふれているではないか。  そういえば、著者には『川柳でんでん太鼓』という、現代までの川柳概説本もあった。

『道頓堀の雨に別れて以来なり』という、川柳作家岸本水府の伝記もある。この著でも、江戸時代後期の風俗を活写する、古川柳の数々のを紹介して、解説に厚みを与えている。 国文学の博識のうえに、川柳のユーモアを交えて、時代を活写する著者のさわやかな語り口に酔う。いや、ただ酔うたげてはない。いつのまにか感動の波押し寄せて、読者の目に涙を誘う。そういえば『道頓堀の・・』でも、最終章では涙が止まらなくなった記憶がある。

 私も参宮道中記を原本で、解読活字本で、さまざま読んでいるが、このような流暢な解説本を書いてみたいものだ。また、我が出羽の人、清川八郎『西遊草』を多く引用して、名所旧跡へ男性の視線、女性の視線の違いを指摘してくれたこと、道中記読みにとっては、貴重な教導となっている。