友だちの死の記憶をなくしてしまったのは、それが誕生の瞬間の記憶だからだ。と同時に死の瞬間でもあるし、死の永遠の瞬間だ。その瞬間に立ち返り続けることが長い間萩尾望都のテーマとなってきた。『海のアリア』ではその瞬間に音楽という永遠を与えることになる。しかし実は、その音楽は『海のアリア』という作品そのものでもあるのだ。