『みどりの守り神』という作品が最後に収録されています。この作品は、他のどの作品よりもドラマティックで感動的なお話。ネタバレをしないように詳しいことは省きますが、とにかく自然環境の偉大さを感じました。地球のあらゆる危機的場面をすぐそばで見守ってくれているような、人間の勝手で好きなだけ傷めつけられても尚、人を守ろうとする寛大な意思を感じ神秘的でした。藤子Ｆ作品の中で、特に生命の寛大さを感じ、やさしさに溢れた傑作。

子供の頃に読んだものもあった。
初めて読むものもあった。
読んだことのある作品も、こちらが年をとって（やだなぁ）子供の時にはしなかった読み方をして楽しめる。
それにしてもこれだけ線を減らして簡略化していながら、どうしてF先生の描く女の子はこんなにかわいいんでしょうね。少年時の「刷り込み」かなぁ(W)

収録作
「マイ・シェルター」
「創世日記」
「いけにえ」
「街がいた!!」
「老年期の終り」
「いちの石炭紀」
「みどりの守り神」
中公文庫版「藤子・F・不二雄SF短編集」（全４巻）の一巻目。

ドラえもん、オバケのＱ太郎、パーマンに忍者ハットリくん。アニメ化され日本国内はもとより世界中で愛されているキャラクターの生みの親、藤子不二雄（二人で合作のペンネーム。後に藤子・Ｆ・不二雄と藤子不二雄Ａに分かれる）。これら今も子供たちに夢を与え続けている数多くのキャラクターを創造したことは、藤子不二雄の仕事の重要な部分を占めていることは確かなことなのですが、彼（ら）の、特に藤子・Ｆ・不二雄の真骨頂は本書に収録されているようなＳＦ短編マンガにあると思います。
時間旅行もの、地球侵略もの、ナンセンスなもの等々、様々なジャンルのＳＦがそろっていて、しかもどれも粒ぞろい。これを読めば、本質はＳＦ短編マンガにありと言うのがわかってもらえるでしょう。

ドラえもんで一時代を築いたことは間違いないことなのですが、ドラえもんしか知らないのではもったいないですよ。

この本の話を読んでいると「あっ、そういう事なんだ。」とか「えっ！？」と言うように話を意外な方向にもって行かれることがあります。でも、藤子・Ｆ・不二雄の他の短篇を読んだ人なら「こんなのはいつもの事だろ」と思うかも知れません。