そうした中で、本書は、時代的な制約を感じさせはするものの、基本的には実証性・客観性を重んじる姿勢で貫かれており、ノンポリ派の小生にとっては素直に読みやすいものになっています。唐宋史家から出発した内藤教授のバックグラウンドが然らしめているのでしょうか。
また、この時代の歴史は分裂的な政治状況をフォローするのが大変ですが、北洋政府と広東国民政府、蒋介石政権と旧軍閥、南京(重慶)国府と共産政権など、主要なアクターがほどよい塩梅でバランス良く記述されており、そうした意味でも読みやすい好著といえます。巻末の解説もよくまとまっています。
欲を言えば、記述が若干政治史に傾き過ぎているように思われ、経済・社会的な要素をもう少し充実できないものかと思ってしまいます。また、南北大戦に関する記述などは、概説書にしては些か詳細に過ぎるように思いました。