伝統的東アジア国際関係の変容
★★★☆☆
本書は、道光から同治に至る清朝後半期を取り扱っており、太平天国・アヘン戦争・義和団事件、さらには日清・日露の両戦争といった多事多難の中、藩属・朝貢を基本とする伝統的な東アジア国際秩序が質的な変容を遂げていく過程が描かれています。
内容的な面ですが、本書は東西交渉の中での中華世界の対応という観点からは良く書けており、また、外圧への対応における日中比較のくだりなどは大変興味深いものがあります。ただ、清朝の統治能力の低下を、政治・経済・社会的なコンテクストでどう分析するかという点では必ずしもハッキリした考えが提示されていないように思われ、些か惜しまれるところと覚えます。