さて、巻末の解説中にもありますが、辛亥革命はそれまでの易姓革命とは異なり、単に一王朝の崩壊を意味するのみならず、数千年に亘った中国の政治・社会・文化システム全体の変革であり、ある意味で中国史上最大のイベントとも言えます。その背景やよって来る由縁などは、近現代史家のみならず、広く東洋史ファンにとっても興味の尽きせぬところです。見方や評価もさまざま分かれる中、東洋史全般に高い見識を誇り、また「書くこと」に並々ならぬ筆者が本巻を担当されたことは、後世の我々にとって真に幸せなことと思います。
他方、この時代は筆者にとってはいわば同時代であり、また、この時代の中国を描こうと思えば話は勢い日本の大陸政策に及ばざるを得ないため、本巻では宮崎博士の政治的な立場が比較的ハッキリ出ているように思います。読者によって受け止め方は様々なことと思いますが、小生は「モノゴトの道理をよく理解する人は、政治論であれ、結局バランスがとれているものだ」と素直に関心しました。