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不幸な国の幸福論 (集英社新書 522C)

価格: ¥756
カテゴリ: 新書
ブランド: 集英社
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足るを知る ★★☆☆☆
読んでいて、気持ちが暗くなるような不幸体質の本。
「足るを知る」という言葉を贈りたい。
足るを知らなければ、死ぬまで文句を言い続ける人生になってしまう、この本の内容のように。
それは、即ち、不幸である。

どんな環境であろうが、幸福を感じる人には感じられる。
逆に、どんなに恵まれた環境であっても、幸福を感じられない人は、永遠に「日本は福祉がダメだ」などと文句を見出して、不幸を満喫するのだろう。

医療費負担は、諸外国より軽いのに、世界一の長寿国である日本。
だが、著者は、日本の医療福祉は遅れているかのように嘆く。

自己否定が日本人は得意なのか、その延長として、とかく「日本はダメだ」という論調。
高校進学率の高さからしても、世界標準からすれば日本が遅れているとはいえなかろう。
いったい、どこが不満なのか?

戦争も65年ないわけで、それだけでも幸福と思うのに。
犯罪も少なく、女性の夜の一人歩きも普通にできる日本。

もし幸福を感じない日本人が多いのだとしたら、この本のような事(ニュースやワイドショーのコメンテーターが言うような内容)を鵜呑みにして、不幸である事に安心している人が多いからではなかろうかと思ってしまった。
読み応え100% ★★★★★
精神病、犯罪心理などに大変詳しい80歳の大先輩からの超現実的な幸福論です。
加賀さんは58歳でカトリックの洗礼を受けています。
なのでいろんな角度からのちょっとした宗教論などもあり面白く読めました。
戦時中のお話、老後論もあります。
前半はデータで現在の日本は世界の中でこんなんだ。
(日本はOECD加盟国の中で下位ばかりで悲しくなりました)
真ん中は不幸な日本で幸福に生きていくにはどうすれば良いか。
後半は小説のように感じました。
宇宙のような人間の細胞、信濃追分のきれいな空、
それぞれの映像が頭の中で浮かんできました。

心に残ったところ
・平均寿命が34歳(2002年)と世界一短いシエラレオネ
・統合失調症はどの国でも百人に一人ぐらいの割合で発症する精神疾患
・連帯保証人という日本独特の保障制度
・幸福を定義してはいけない
・ハンセン病の新規患者がインドでは今も年に十数万人単位で増えている
・人生に期待するのをやめて、人生から自分が何を期待されているかを考えよう
・「場」を増やして心の免疫力をアップ
・成功の反意語は「チャレンジしないこと」
・好きなことがなかなか見つからないという人は、好きなことと得意なことを混同し、
それがどう評価されるかにこだわりすぎているのかもしれません

久しぶりにスラスラ読めない、読み応えたっぷりの本でした。

改めて、GDP至上主義にとらわれてはいけない。われわれが幸せになるために、何をしなければいけないのか、考えさせられた。 ★★★★☆
戦後日本人は著しい経済成長をしてきたにもかかわらず、人々の幸福感は一向に向上するどころか全く変わらないという。

本書の前半では、評価の物差しを他者に求める日本人の特徴を分析しながら、経済成長第一主義で来たこの国が今、コンクリートと見劣りするセーフティネットと借金と膨大な数の老人を若者に背負わせていると指摘する。

本書の後半では、幸せという概念は心の持ち方であるということを多くの実例から示し、老いや死さえも肯定的に受け入れる著者の考えが示される。

改めて、GDP至上主義にとらわれてはいけない。われわれが幸せになるために、何をしなければいけないのか、考えさせられた。

81歳とは思えない文章力と、81歳だからこそ言える説得力のある文章に引き込まれてしまった。
まずは、気づき、認める所から。 ★★★★★
日本の現状を多角的に示しているすばらしい本だと思います。
小説家であり、精神科医であり、人生経験豊富な著者ならではの切り口で、多くのデータをふまえての説明には高い納得感がある。
今の日本人を、そしてこれから日本人の幸福を考えるきっかけとして、多くの人に読んで欲しい。
幸せになるための日本人専用処方箋 ★★★★★
他者との比較で自分の価値をはじき出し,上か下かで判断する日本人.他者の目を気にし,他人たちが決めた理想の幸福像に取り付かれる.「ほら,他人が見てるでしょ!!」とわが子を叱る親に象徴される日本人の習性.この習性から抜け出して,自分の価値,幸せを自分で考えることが肝心である.そして,そうした子育ても必要だと説く.子どもの秘密を暴くことなく,見守り,個を確立させるように育てることの重要性を指摘している.

戦中は言うに及ばず,戦後はアメリカに追いつけとばかりに経済的豊かさを追い求め,今も皆が一流大学,一流会社を求めている.他人が決めた幸せ路線からの脱落を恐れる.これでは勝ち組しか幸せになれない.そうした社会は,格差を生み,結果的に不幸が蔓延する.

GDPはトップクラスだが,社会保障給付費のGDP比は17.7%で,OECD諸国(29カ国)の下から7番目.家族子供向け手当てなどの公的支出のGDP比は0.7%で,OECD高所得国(24カ国)の下から2番目.総医療費の対GDP比は約8%で,OECD加盟30カ国の下から9番目.極めつけは,社会保障還元率で,日本は約40%と先進国最低水準であり,スウェーデンの75%に遠く及ばない.このような政策に怒らない国民性.身近な自分の幸せのみを考える利己的な国民.この性向を打破し,国民が幸せになるためには,国民が自分の意見を言い,自ら社会を変革していく「市民」になる必要があると説く.

後半は,幸せになるための個人的な処方箋が書いてある.幸福を定義してはいけない.自分には何ができ,何をしてあげられるか,何をするかを考える.「人間万事塞翁が馬」「禍福は糾える縄の如し」「足るを知るは富む」などの故事を引き,諦め力を説く.諦めとは仏教用語で,「真理を悟る」「道理を明らかにする」という意味だそうだ.

未来を見据えてビジョンを描く件では,ふたたびスウェーデンの事例が引き合いに出される.高福祉高負担の国は,環境,福祉,経済で成功している.人間と自然を大事にしなければ,持続的な経済発展,社会発展はありえない.福祉と経済は両輪なのだ.北イタリアから始まったスローライフ,スローフード,バングラディッシュのグラミン銀行にも言及し,これからの生き方を提示する.

フィナーレは,高齢者に向けた老い方と死への準備を諭す.ガリバー旅行記に登場する,不死人間が住むグラナグ国,木の葉や花びらが散る様子を示すギリシア語に由来するアポトーシス(細胞の自壊)に言及する.死が生の一部をなすことは,宇宙の誕生から私たちまで,綿々とつながっていることから説いている.たとえばヒトを構成する元素は,酸素,窒素,炭素,水素で96%になるという事実.このうち,窒素と炭素と水素は36億年以上も前にできたもので(酸素は地球でできた),そしてヒトは38億年地球上の生物競争を生き抜いてきたということを教える.そしてそれは子孫に綿々と続くということを思うと,死は怖くなくなる.

本書は80歳を超える著者の豊富な経験と広範な読書に基づく深い思索が詳細に開示された名著だと思う.日本人は,豊かさから真の豊かさを模索し,そして幸福論へとたどり着き,皆の関心は幸福に移っている.この国が幸せで満たされるために,この本をできるだけ多くの人に読んでほしい.