大いに期待していただけに
★★★☆☆
第2次世界大戦中、英国はケンブリッジ近くの大規模な秘密施設、ブレッチレー・パークに種々の専門家を集めて、ドイツのエニグマ暗号の解読に当たらせていた。1943年春、これまで解読できていたエニグマ暗号が、突如解読できなくなる非常事態が発生、神経衰弱で静養中の若き天才数学者トム・ジェリコが急遽呼び戻される。一方ジェリコは、同じブレッチレーの職員で、もと恋人クレアの様子に不審を抱き、ひそかに調査を開始する。
情報戦・暗号戦という裏の戦争、地味だが戦争全体のゆくえを左右する重要な戦いの模様が詳細に描かれ、非常に興味深かった。特に、裏の戦争と表の戦争(本書ではUボートと護衛船団との海上での戦い)との関連がおもしろかった。だが物語としては、何となく話に乗りきれず、いまひとつ楽しめなかった。
最大の要因は、ジェリコのクレアへの態度がストーカーのように思えて、どうにも共感できなかった事である。ジェリコは激務で神経を病み、通常の精神状態ではなかった、また数学オタクのジェリコは恋に免疫がなく、いったん恋に落ちたらブレーキがきかなくなるのかも…などなど、頭では事情を汲んで、大目に見ることはできる。それでも、感情的にはどうにも好きになれなかった。大いに期待していただけに、正直なところ残念である。
エニグマを題材にした小説です。
★★★★★
本の内容は、アメリカからの援助物資を積んだ船団をUボートから
守るためエニグマ暗号の解読にあたる主人公と、その主人公と
付き合っていた女性の失踪に関わる事件を主軸として進んで行きます。
私は、エニグマ暗号の解読について興味があり、それらについて何か
知れればと思いこの本を読んだのですが、解読についてはあまり
技術的なことは載ってはいませんでした。
しかし、読み物として第2次大戦中のイギリスの有様などが書かれており
面白く、最後まで読めました。
良著だと思います。
暗号解読戦を舞台に繰り広げられる秀逸サスペンス
★★★★★
天才サイエンスライター、サイモン・シンの名作「暗号解読」を大興奮して読んだのが
かれこれ7、8年前でしょうか。(これはいまでも不朽の名作)
もちろん詳しく解説されているドイツの暗号システム、エニグマの
イギリスによる解読作戦を軸に主人公ジェリコ(天才的な数学者)が
恋人クレアの失踪事件の謎に迫ります。
暗号はたとえ解読が成功していても、解読が悟られないように
味方の犠牲を涙をのんで見殺しにするという残酷な現実があります。
連合軍の護送船団とドイツUボートとの接触情報を手がかりに、
暗号の解読の糸口をさぐるという後半の山場は手に汗握ります。
エニグマの仕組みを良く知っておくとさらに楽しめますので、
別のレビュアの指摘通り、すこしインターネットで情報を
検索されることをお進めします。
もちろん、サイモン・シンの「暗号解読」ならベスト!
暗号解読の戦術面を背景にした名作
★★★★★
エニグマ暗号解読の戦術的な内容が主なので、大変に興味深いです。
いわゆる、ブレッチェリーパークですね。
ここで働く人々は戦時と戦後何年も秘密保持を言い渡されていたため
軍務についていないと人から陰口を叩かれたりして実際には大変だったそうです。
海は見えないけど、ここはBattle of Atlanticの最前線でした。
最後は例の事件もネタに出てきます。
なかなか盛りだくさんですね。
好き嫌いは分かれるだろうけど
★★★★☆
僕は好き。さらに気が滅入る小説を読みたければ「英国占領」なのだけれど、厚くて暗い雲と寒さを感じたいのならこちら。