占領されていた頃の東京の姿を知るために必須の書籍
★★★★☆
戦時中の空襲で壊滅的な被害を受け、その爪痕が残ったまま、進駐軍に占領された東京の様子を写真と文章で分かりやすく示した本です。街の至るところで見かけられたGHQの兵士の生態や当時の日本人の生活実態を如実に知ることができるよう編集されています。
各章のタイトルは、「占領期の東京へ」「『帝都』の崩壊‐空襲から接収へ‐」「軍事施設の解体と接収地」「都心部の接収地をめぐる」「ディペンデント・ハウジング・エリア‐占領軍家族住宅地区‐」「USハウス‐接収住宅‐」「もう一つの世界」となっています。
筆者の佐藤洋一氏は、都市形成史、都市映像史の研究者で、執筆時、早稲田大学芸術学校空間映像科客員助教授でした。その佐藤氏が、米国メリーランド州にある国立公文書館で、「シティ・マップ・セントラル・トウキョウ」や3000枚に及ぶ占領期の東京の写真との出会いによって本書が記載されることになったようです。
掲載されている多くの写真を眺めているだけで、1945‐52年当時の東京の姿を知ることができますし、資料に基づいた記述が詳しく丁寧で信頼に足るものであるのはすぐに理解できました。
第5章で書かれている「USハウス(接収住宅)」での進駐軍の日常生活や、接収して住まわっている広々とした山の手での住宅の写真を眺めていますと庶民の暮らしとは別天地のようだったのが伝わってきます。
60年を超える歳月が流れました。写真と言うものは、歴史の証言者のような様相を帯びます。被写体となった人も結構な割合で鬼籍に入られていると思いますが、当時を知る人は勿論のこと、生まれていない世代にとっても占領下の東京の実情を知る上で貴重な本と言えるでしょう。