米側独自のデータに乏しく期待はずれ
★★☆☆☆
「生きて虜囚の辱めを受けず」という戦陣訓は、多くの自殺者を生み兵站軽視を強化し、あるいは捕虜となり帰還したひとびとを戦後長く苦しめたばかりでなく、敵側捕虜の蔑視虐待にも結びついたとのそしりもある。しかしながら、それがどのように兵卒に浸透しどこまで受容されていたかについては、実は、まだ両論があり論争がくり返されている。
本書に対しては、そもそも米国側の資料に基づく論文・著述との期待があった。米軍が収容した日本軍捕虜から直接聞き取りした記録があるはずで、それは上記の論点に新たな資料を与えるものと期待したのだ。しかしながら、本書の資料の多くは日本人自身の著書(回想録や自費出版の体験記)であり米側の独自データがないことに失望した。
外人の日本論は英語で日本のことを紹介することを目的にし、内容は引用、孫引きが多く解釈論に過ぎないことが多い。翻訳の翻訳や循環論にどれほどの意味があるのか、多いに疑問である。