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横井小楠―維新の青写真を描いた男 (新潮新書)

価格: ¥714
カテゴリ: 新書
ブランド: 新潮社
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偶然か、必然か。 ★★★★★
 勝海舟が西郷隆盛とともに怖れた人物が横井小楠だが、坂本竜馬、由利公正を弟子としていた。その横井小楠というとらえにくい人物をコンパクトに描いたのが、本書になる。
 横井小楠は明治新政府の参与となったが、明治二年に暗殺されている。ために、新政府の骨格を作り上げるにとどまっているが、出る杭は打たれるの言葉通り、反感を買っていたのだろう。この暗殺にかかわるエピソードは、あまりの偶然に驚く。
 日本人はヒーローを求めたがるが、この横井小楠の生涯を見ると維新の成果は多くの人々が影響し合って成し遂げたものとわかる。坂本竜馬という行動派の後ろに、小楠というシンクタンクがあったということを知っておくと竜馬の動きがより一層理解できるのではと思う。
 本書の中で感心したのは、横井小楠がケンペルの『鎖国論』を読んだことで発想を開国に転換したことだろうか。長崎のオランダ通詞である志筑忠雄がこの論文を翻訳しなければ、これを横井小楠が読まなければ、理解できなければ、歴史はどのように変わったかは計り知れない。
持て囃されているその中で・・・・ ★★★★☆
NHKで「龍馬伝」が放映されている中で、あの皮肉屋・海舟をして「世に恐ろしい奴が二人いるその一人が南洲でいま一人が小楠」と言わしめ、龍馬の八面六臂の行動の支えにもなっていた小楠の思想と生き様・・・「りょうま・りょうま」と持て囃されてなかで・・・無性に読みたくなって買った一冊でした。
堯舜孔子の理想主義〜維新の隠れたブレーン ★★★★☆
恥ずかしながら「横井小楠」の名は本作に対する新聞の書評で初めて知った。維新の陰のブレーンと言う事で興味を持った。著者は在野の研究家だが、同郷(熊本)のよしみと言う事もあるのか、小楠に対して"贔屓の引き倒し"的言辞が散見され、事実なのか著者の希望的憶測なのか不明な箇所が多いように思われた。例えば以下。「小楠の唱えた日本国中共和一致の政治の実現のため、海舟、龍馬、西郷が努力したことが、明治維新につながった」。これは恐らく著者の意見なのだが、この前文は事実の記述なので、文脈から小楠が大立者と錯覚してしまう。「海舟は政治判断などに困った時は、必ず小楠に相談した」も同様。事蹟のみを淡々と綴った方が、小楠の真価が更に良く読者に伝わったと思う。

小楠の基礎は朱子学で、尊皇攘夷派だった由。それが開国派に転じる様が第一章のテーマなのだが、この方針転向には1, 2頁しか割かれず、小楠の思想の変遷を辿ると言う意味では物足りない。しかし、堯舜を理想として実学を重んじ、開国派に転向後は国際協調主義・世界平和主義を奉じていたと言うから、高邁な思想に驚く。それでも、外国の噂や本を見聞しただけで開国論・国際平和主義に転じたと言うのは流石に飛躍が大き過ぎるので、この部分は綿密な分析が欲しかった。第二章で小楠著「国是三論」が紹介されるが、いわゆる殖産興業・富国強兵・文武両道が論じられており、その先見性に驚かされる。この後、「国是七条」を建白して公武合体を図る等、幕政改革に手腕を発揮するが、これが尊皇攘夷派の反感を買い後の暗殺に到ったようだ。幅広い視野と平和的な理想主義を持ち、維新関係者に少なからぬ影響を与えた事は確かなようだが、一方、"機を見るに敏"と言う性格からは程遠く、敵を作る原因になったと思う。著書の記述姿勢には客観性と言う点で疑問が残るものの、歴史に埋もれた小楠を熱情を持って描いた点は評価出来る。
ドロドロした幕末・明治維新の日本を知の力だけによって導いた男 ★★★★★
「古人の学というのは、書物の上の修業ではなく、自分の心の修業である。・・学問の第一のことは、心において道理をきわめて、日常生活において実現することp.38」とし、「日本が堯舜三代の政治を実践し、西洋との貿易により富国強兵と友好を図る道義国家となることを理想としていたp.136」小楠は「東洋の精神文明をもとに西洋の文明を取り入れて、富国強兵に努め、さらに民主的、平和的な道義国家となって、これを世界に広めようp.138」というビジョンを持っていた。そのスケールの大きな思想に多くの有力者が共感し、政治についてのアドバイスを求めてくるようになり、「政治は道徳でなくてはならない、・・誠真誠意が治国平天下の基」とし、「人と応対する場合には、私心を去り、虚心に人の言を尽くさせたあと、懇談すれば相談は必ずまとまるp.68」という姿勢をとった横井の政治的手腕と見識により、新政府においては藩の後ろ盾が全く無いにもかかわらず参与に抜擢され、活躍。その思想は竜馬の「船中八策」や新政府の「五箇条の御誓文」の中にも反映され、日本の新しい形を示す青写真となった。こうした横井の偉大さがよく解かるが、同時に驚きなのは横井の暗殺後、暗殺者を公然と擁護する高官が新政府内部の中に現れ、犯人の処刑の是非を巡り政治闘争が繰り広げられ、犯人擁護派が横井の罪状を捏造してまで犯人を守ろうとしたこと。初期明治政府内部の暗黒面がよく解かる。反対勢力の妨害に負けず、改革に奔走し、日本の未来を切り開いていった横井の弟子達の姿も感動的。
まずは本書から ★★★★★
 横井小楠に関する本は、けっこう出ているが、現在のところ、本書がもっとも入手しやすい。また内容も、小楠の生涯と思想を全般的に簡潔に記述しているため、小楠のことを知りたいと思う方々にとっては、本書から読み始めるとよいのではないだろうか。

 記述はわかりやすく、読みやすい。著者は、市井の小楠研究者であるが、ときおり挟み込まれている小楠の資料を発見した際のエピソードなどが楽しい。

 小楠は、幕末の影響力のあった思想家で、高邁かつ現実的な日本の針路を示した人であるが、酒などで数々の失敗もしている。本書には、そのあたりの話も書かれており、小楠に親しみを感じた。