なんとなく、江戸時代の農村は抑圧されていた、というイメージがあるが、わりあいに自由で大事にされていたという点が意外で面白かった。
本書は、専門書を一般向けに新書に仕立て直した、ということで、詳細な資料分析が内容の大半を占める。どちらかというと日本史マニア向けで、書名から期待するほどの起伏はない。真面目な研究者の書いた良質な書物だとは思うが、読み物としては残念ながらやや退屈であった。
ただし、豊前国(福岡県)細川領を主な対象として江戸時代初期の一般的な状況を述べているのであるが、資料の解説に費やされている部分が多すぎる。本書の対象者は専門家だけではないはずである。一般読者が読みやすいように考慮されていない点が大きなマイナス要因だと思うので、☆は3とする。