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定本 柄谷行人集〈5〉歴史と反復

価格: ¥2,730
カテゴリ: 単行本
ブランド: 岩波書店
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柄谷行人5 歴史は繰り返す? ★★★★★
「昭和45年=1970年」はオカルティズムではないか、という声があるようです。大変面白い着想ですが、信憑性はどうか? コンドラチェフの60年周期を応用したものと思いますが、なるほど、明治=1868年・昭和=1926年・平成=1889年は<たまたま>およそ60年周期です。でも、昭和が明治を「反復」したと言うのなら、平成は昭和を「反復」するのでしょうか? とすれば、明治10年の西南戦争・昭和11年の2・26事件に相当する平成の出来事は何ですか? 平成13年の9・11テロかな(国内じゃないけど、自衛隊の海外派遣などへの影響は大きかった)。明治22年の憲法発布・昭和21年の新憲法発布を「反復」させるには、この5年ぐらいで、平成20年代の頭には、是非とも憲法を改正してしまいたいところですね。三島由紀夫の自決(昭和45)は乃木将軍の殉死(明治45)の「反復強迫」である、と信じられるかどうか、が評価の分かれ目でしょうか?

柄谷氏に限らず、哲学はしばしば強引に論理をすすめますが(「我思う故に我あり」の「故に」が既に強引です)、強引に論理をすすめること(飛躍)と、「昭和45年=1970年」のような奇抜な着想を前提にして、強引に論理を開始すること(独断)とでは、まるで話が違います。ーー「昭和45年=1970年」への評価は、保留させていただきます。

(柄谷氏は「トランスクリティーク」の旧版「あとがき」で、これを書くのに10年かかった、40年考えつづけてきた、と言っています。柄谷行人集全5巻を読むと、彼がこれまでに書いた文章は、この記念碑的作品を完成させるためのデッサンだったのかもしれない、と思われてきます。実際にいくつかの文章は重複しています。が、これによって私たちの理解が深まりこそすれ、単なる繰り返しで終わってはいません。現在進行形の本の中で、こんなに面白い5冊は滅多にないと思います)
「昭和の終焉」を世界史的な構造と反復に還元する ★★★★★
『トランスクリティーク』の序文にこうあった。〈本書では、私はその中に育ち且つ考えてきた日本の歴史的文脈にほとんど言及しなかった。(中略)だが、そうした論考を省いたのは、別の本として書いているからである。〉

 筆者は世界的な経済危機や議会制の破綻の到来に関して観察される反復性を、世界資本主義における約60年の景気循環を示す「コンドラチェフの波」として把握している。しかし、この第5巻で論じられているのは、そのような形式(構造)ではなく、その「反復強迫」である。経済的には貨幣が「穴」として機能し、「反復強迫」としての恐慌をもたらすのだが、政治的には王が、民主主義革命において追放された王が穴として機能する。1870年代、1930年代において「反復強迫」されたボナパルティズムを可能にしたのだ。

 この巻においては、日本における歴史と反復の考察が、主として文学作品の分析を通してなされているが、見事という他ない。特に第二部の終章「近代文学の終わり」において、中上健次の『奇蹟』への言及があるが、それは想像を絶するものである。