財務と契約の視点
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財務的な目的を達成するために、契約を有効に活用した良い例が述べられている。
複数の利害関係者が存在する場合、それぞれの思惑は一致するものではなく、
契約で目的と判断基準を明確にすることで、コーポレートガバナンスを達成している。
株主間契約から取引契約と多岐にわたり、経営の意思決定からオペレーションまで適切に機能するように取り組んだことが伺える。
グローバルに活躍する企業が増える中、日本の暗黙の了解は世界では通用しない。
世界各地で働く社員が共通の目的と意思決定基準をもって活動できるよう、
経営管理と契約に一貫性があるかなど再度考えさせられた本である。
アメリカではCFOは契約や法務に関する知識が当たり前のように求められる。
特に、知的財産の保護・積極的な経済価値の創造という観点で契約が有効に活用されているそうである。
真にグローバルに強い企業を育成するためには、契約面で競争優位性を確立することも必要となる。
こうした観点で本書を読んでみると、世界のリーディングカンパニーの取り組みの凄みが更に分かるのではないか。
まだ、部分最適を目指しますか?
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全体最適のメリットは?と聞かれることがある。本書を読めば、すぐに理解できる。グループ会社間で、お互いの目先の利益を追求する
ばかりに、将来のグループ経営ビジョンを見失い、いかに、無駄な労力を費やしていることが、ナンセンスなことかを!
確かに、仕事によっては、部分最適が必要であることも、事実であるが、昨今のグループ経営を目指していくならば、本書でいう
「ビッグウォレット戦略」は十分に学ぶべき価値のあるものである。但し、本書にも記されているが、その道のりは、極めて険しい。
様々な困難が待ち受けている。なぜなら、グループ会社間といえ、サラリーマンの集団であるからである。職務に忠実だからこそ、
サラリーマンの性が、どうしても目先の部分最適にとらわれてしまうのだ。コカコーラという外資系企業でもである。
そのあたりを、赤裸々に綴られている。ここを読むだけでも、非常に参考になる。
そして、筆者が読者に宛てた巻末にある5つの価値観は、これから仕事をして行く上での教訓になるであろう。何事も、一歩踏み出す
勇気が一番なのだ。
それらを踏まえて、本書は、繰り返し読むべき“買い”の本だ。
どれも言うは易いが・・・
★★★★☆
協業による利益の極大化、部分最適より全体最適、規模の利益の追求、成果の公平な配分、・・・。
どれも言うのは簡単で、企業が抱える課題の解決策として用いられることの多い言葉ですが、実際に当事者となって実行するとなるといかに大変か、それがひしひしと伝わってきます。
フランチャイズと地域のボトラーによる事業展開という特徴的なビジネスモデルをもつコカ・コーラが、収益力の強化のために苦悩し、試行錯誤を繰り返している様子を少しでも垣間見ることができたのは、大変有意義なことだと思います。
全体最適を図りつつ部分にも留意
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ビッグウォレット戦略とは、物事を大きく考えることであると理解しました。
ただ、「全体最適」と「部分最適」は矛盾するもので、全体最適を推し進めていかなくてはならない経営層としては、部分最適がうまくいかず、従業員の士気が下がってしまうことだけは避けたいものえあります。
本書はそれに対するソリューションにもきちんと書かれていて、非常に参考になりました。
合併・買収によらない新しい事業統合
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評者は、この書籍のテーマとなっている、コカ・コーラの事業統合の話を数年前に耳にしたときに、絶対に上手くいかないと思ったのを覚えている。
2005年に本格的事業を開始し、3年間に渡って1千億円以上の原価削減を達成した歴史的事業は、意外にも合併や買収といった事業統合ではない別の方法−ビッグ・ウォレット(大きな財布)戦略によって成し遂げられた。
本書はその、合併・買収によらなくても統合を成し遂げて規模の利益を追求することができるビッグ・ウォレット戦略を詳しい歴史背景とともに説明している。
その秘訣は、資本の論理による支配ではなく、当事者同士の議論を積み重ねることによって得られるルールを合意すること、とされている。
ただし、それは一筋縄ではいかない。当事者は自分の利益の都合(小さな財布)を考えて議論を進めようとするからである。
小さな財布の都合を排除して、いかに大きな財布のメリットを追及するか、を筆者が先頭に立って進めた経験を元に、分かりやすく解説している。