世界の現実はこれほどにも残酷である
★★★★☆
本書は『インドの債務児童労働』と同じく、子供たちの奴隷化について記したものである。科学技術が高度に発達した現代世界で、子供の誘拐や人身売買、臓器狩り、性的虐待、強制労働がありふれたものとなっていることは何を意味するだろうか。本書に書かれた世界の現実は、人類の残酷さと利己主義を露わに示してくれる。子供の奴隷が多いのはサウジアラビア・タイ・インド・フィリピン・アフリカ諸国などだが、奴隷を工場や農場で酷使して大きな利益を得るのはアメリカに本拠地を置くものが多い、多国籍企業である。
本書は、奴隷制について政府よりも企業・資本主義・グローバリゼーションの責任を追及する。そのことへの批判はできるが、政治家や奴隷所有者だけが悪いのではないという、新しい視点をもたらしてくれる。大企業の経営者と株主、そして安い商品を喜ぶ私たち消費者をも告発している。
「悪いのは誰なのだろうか」。こう問いたくなるが、本当の悪者はなかなか分からない。資本家・経営者・政治家・軍人・地主・消費者……それぞれに責任があり、誰かを罰すれば奴隷制が消えるわけではない。本書には知りたくないことが書かれているかもしれないが、この世界で暮らしている以上、知らなくてはならないことである。読者が一人でも増えてほしいと思う。
S・ジョージをしのぐほどの衝撃!
★★★★★
ネパールでかつて遭遇したチョカダという子ども債務奴隷(制度)がまだ「健在」であることに言葉もない。これはどうみても父親に識字能力があるとは思えなかったが、それでも「借用書にサインした」と認定され(=債務が法的に認定され)、一家がその「借財」がゆえに働く、というものだった。国連(UNICEF http://www.unicef.org/)の推計では世界の非識字率は16%であり、貧困の再生産はいまも進行している。危険な児童労働は、例えばhttp://ban.org/なども報告するように「リサイクル(!環境に優しい?)」名目のハイテク機器からの稀少金属の抽出などが挙げられるが、これに従事するほぼ半数以上が子どもだという。
http://ban.org/ban_news/2009/090419_effects_of_ewaste_on_ghanaian_children.html
フィリピン、DOLE=Dep of Labor and Employment http://www.dole.gov.ph/の推計では240万人の児童労働者が存在し(全人口8857万人;2006年国勢調査 うち労働人口およそ3600万人 失業率7.4%とされる) 、農業やインフォーマルセクターを中心に従事する。Out of school youthとよばれる中退者や最初から学校に通わない学齢期の若年層増加も懸念される。
http://www.angelfire.com/ab2/relgroup/Phil.html
Bata, Bata, Bakit ba gumaguwa 子どもよ子ども、どうして働くの?
本書にはこうした事例が多国籍企業との関係で多く登場する。そして、その意味ではわたしたちもまたじゅうぶんに当事者性を持っていると気づかせてくれるのだ!
そしてこうした構造は極めて危険である。社会の安定性・継続性を著しく欠くことになるから…就学し、一定の資格を得た就業人口グループは海外の労働市場を目指す…こうして常に、フィリピンは国内的な不安定性の上に成り立つようになってしまった!これを指揮・演出したのは大雑把にいって、マルコス元大統領。開発独裁のなかで国内の批判勢力を封じ込めようと半ば国外追放のようなかたちで、ね。そしていま、第二、第三のフィリピンとしてビルマなどが…
ひとつの対応として「債務繰り延べ」の条件を大幅に変更する必要があろう。児童労働を減少させることによって一部債務の棒引きなどを実施する、というものだ。ISO認証などで児童労働を労働市場から追放できるとの見解もあるが、おいらはそれを実情を知らない甘い見解と判断する。大人の労働のより公正な評価と児童労働の締め出しはきわめて相関的な関係にあるのだから。 70〜80年代の公害批判、産業社会批判がグ(ク)リーン・エネルギー礼賛・推進として産業界に取り込まれ、今なお労働格差と南北格差・性差を生み出し続けている現実。制度悪とか悪法も法、とかよくいわれる詐術ではあるのだが…戦後にいたっても日本の統治者はRAA: Recreation and Amusement Associationを組織して「良家の子女を守る防波堤」なる議論を弄んだ〔「敗者の贈物―特殊慰安施設RAAをめぐる占領史の側面 」ドウス昌代=講談社文庫=など参照〕。幼児ポルノやその手のゲームなどもしばしば「防波堤」議論のなかで「消費」されることがあるが、梁石日のタイを舞台にした小説「闇の子どもたち」を瞥見するまでもなく、これはトンデモな俗流議論であろう。植木枝盛先生(日本の人権論の泰斗)を独り、しかと噛み締めよう!
みんなに読んでもらいたい素晴らしい本
★★★★★
ボランティアで児童支援の活動をしています。学者さんの書く本と現場の活動のギャップに四苦八苦してきました。でも、この本はバランス良く、まとまり良く、そして身近な商品をとりあげてくれていて、とても読みやすい本でした。産業革命以来、イギリスでもアメリカでも子供たちが信じられないような厳しい労働におしこまれ、それがアメリカの「南部化」「グローバル化」という形で世界に広がっているのではないか、という著者の指摘は、案外あたりまえなことのようで、誰も気づいてこなかった鋭い視点と感じました。現代の問題を、しっかりとした着眼点をもって歴史的にも筋道立てて考えるべきことを痛感させられました。巻頭の写真編も、本当に素晴らしい写真ばかりです。予想とはちがって悲惨な写真は全然無いのに、一枚一枚から、色んなことを考えさせられます。
紹介されている事例も、他の本では知ることのできないものがたくさんありました。強く説得され引き込まれるような文章の流れで、最後まで一気に読ませれてしまいましたが、押し付けがましいとは感じませんでした。むしろ、自分が「こんなことに、なぜ気づいて来なかったのか」と、不思議にも思いました。政府や政治の責任についての内容が少なく感じましたが、本のタイトル、サブタイトルから考えると、それはむしろ当然だと思います。とはいっても、中国やナイジェリア、アメリカなどの政府の問題点や国際機関の問題点についても、たくさんのことを教えてもらえました。素晴らしい本、できるだけ多くの人たちにぜひ読んでもらいたい本です。
児童労働の責任を多国籍企業のみに押しつけてる印象
★★☆☆☆
多国籍企業が発展途上国の児童労働を助長してるという内容。
多国籍企業が利益を削って、労働者の福利厚生を充実させるべきという感じで話が進んでいく。
読みながら、ずっと疑問だったのが、児童労働とか最低賃金とかを監視・規制するのは、本来政府の役割なのではないかということだ。なんで、児童労働を黙認してる途上国の政府を糾弾しないのか不思議だ。
すごい本
★★★★★
すごい本が出たものです。この本を読むと、自分が一番知らないのは自分なのだ、と痛感させられます。