京都の撮影の指南書として
★★★★☆
副題の通り、写真と文の竹下光士さんは山科区在住のカメラマンです。このムック発売の前年の2008年に8割方の写真を撮っていますので、最新の被写体の状況が写し込まれています。
各写真には、使用機器や撮影状況だけでなく、収録日時まで記載してありますから、条件さえ合致すれば、そのような景観と巡り会えるわけで、よい指南書だと言えるでしょう。
4ページの冒頭の春を飾る本満寺の見事なシダレサクラですが、晴天でしかも広角レンズを駆使しての写真です。最近はよく知られるようになった桜の名木だと私も思っています。この写真は理想的な構図であり、このように撮れれば良いなあ、という見本のようなものでした。
美しい写真と出会うとそれと同じような作品を撮ってみたい、と思うことがよくあります。願望だけでなく実際にそれをそのように撮るとなると指南役も必要になるわけです。
被写体をどのように撮るべきか、どのタイミングで何を撮るのかということは、検討しなくてはいけません。本書もその手引ですが、実際に街を彷徨、様々な社寺や季節の花と出会うことで違う京都の景観を会得して初めて納得できる写真を撮ることができるのでしょうから。
98ページ以降は、永源寺、日吉大社、金剛輪寺のように滋賀県の紅葉の名所が含まれています。見事な写真ですし参考になる紹介ですが、京都の紅葉の名所はほかにもありますので、『京都撮影四季の旅』というテーマで統一されたほうが良かったと思います。
雪景色の写真は努力のたまものです。シャッターチャンスが限られた中での参考事例だと思いました。
それぞれの季節ごとにモデルプランが掲載してあり、撮影旅行の参考になると思います。また50ページの「いま、京都撮影が危ない!」で書かれている三脚禁止の現状は同感です。「カメラマンに対する周囲の視線が冷ややかになったと感じます」という言葉は長年撮り続けてこられた方の実感でしょう。