美しい都市の原動力は?
★★★★☆
■ <美しい都市を創るためには、
法律や条例で制度的に保障して事足たれりとするのではなく、
もっと突き詰めなければならない。
もっと何か本質的なことを加えないと、美しい都市は実現できないのではないか。>
こんな問題意識を持ちながら、
人々の信仰心が強く根付くいわゆる宗教都市とでもいえる
高野山、平泉、天理などの地を訪れ、
問題提起型の著作として取りまとめられています。
従来の公共事業に対する批判的な見直しの流れをつくり、
神奈川県・真鶴町での美しい街づくりをめざし取り組みを進めてきた著者がたどり着いた
新境地といえましょうか。
■ ただ、美しい都市づくりの原動力を、
そこに住み、そこを訪れる人々の願いや心のありように求めるという
視点には共感できるものの、
<祈り=宗教>とのみ捉えることにいささか疑問を感じました。
生命を育む人々の崇高な精神的な営みである「祈り」の行為は、
何も宗教活動だけの専管ではありません。
その一つが平和の祈りであり、さらには音楽や美術などの
芸術・文化活動などへも広くつながっていくのではないでしょうか。
新聞報道によれば、広島の平和記念資料館が、
戦後の建築としては初めて、国の重要文化財に指定されることになったとのこと。
すでにユネスコの世界文化遺産にも指定されている原爆ド−ムをも含め、
これら広島平和公園一帯を核とした広島の街は、まさしくヒロシマの平和への熱い思いが
込められた<美しい祈りの街>だと思います。
そんな自分なりの視点にも引き寄せながら興味深く読ませていただきました。
これからの掘り下げと広がりを期待させる労作です。