冒頭の「タクシーをぶっ飛ばす日まで」は、突然恋人に会いたくなる瞬間、タクシーをぶっ飛ばしてでも会いたい、という恋心について語っています。作者の憧れをこめて、それを好意的に書いていますが、ご本人はしたこともないし、できそうもないそうです。
非日常の行為を描きながら、日常的な範囲で納まり、そして最後は、作者特有の肩の力が抜けた柔らかさで占めくくられています。このあたりが角田流なのでしょうね。
「贈り物」も良かったですね。失恋した瞬間には、何の慰めの言葉も役に立ちませんが、作者が描く運転手さんのような優しさこそ、確かに最高のクリスマスプレゼントかもしれませんねえ。ラストの三行が作者の才能を感じさせました。
「おとなりさんの時間について」で描かれている失恋の痛手からの回復のお話しもうなずけました。確かに、傷を癒すのには時間が最良の薬ですね。冷静になれば、また経験をつめばそれは一定の理解が得られますが、当事者にとってそれどころではないのも良くわかります。若さの特権は、時間が沢山あることだといえるかも知れませんが。
全編通じて、作者の若かりし頃(現在も若いが)の感情のきらめきがいたる所で感じられましたし、それは才能の輝きを予兆させるものでもありました。
ストレートな感情表現って若さの特権なのかも知れませんね。
恋をしていて、悩んじゃったりしている時には元気を。
恋をしていないなら、恋をしようかな、
なんて思わせてくれる前向きな本ですよ。
生きていることや自分のまわりにいる人々に感謝したくなる・・
そんな本です。