ピアノ曲の楽しみ方にもいろいろあって
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ピアノ曲が大好きだというとき、一般には、スタンウエイやベーゼンドルファあるいはヤマハなどのコンサートピアノを使って、
大演奏家が大曲を演奏したものを聞いて、解釈がいいとか、響きがすばらしいと感じながら楽しんでいるのだと思う。
しかし、この曲は作曲当時どんな響きだったのだろうかとか、この曲の音の連打などいまのピアノでは必要ではないのに
と考えながら自分の世界に浸るのも、また別の楽しみ方だと思う。
ピアノの歴史や構造を書いた本は外国にかなりあり、日本にも少しはある。
けれど、内容は充実しているが教科書的知識を与えるだけの無味乾燥なものが多い。
その点、この本は楽器と作曲家の依存関係が書かれていて、物語的面白さも持っている。
また、当時の楽器の特徴と曲の関係が、ピアノ譜で示されている。
読譜能力がなくても、常識的な最低限の楽譜知識があれば、本文の説明で理解ができる。
添付されているCDで古楽器の演奏をきくと、
楽器の改良と並行して次第に技巧的大曲が作曲されていった経緯がわかり、
メカニズムがいかに作曲に影響をあたえているかよくわかる。
楽器の改良と作曲技法の相互作用を知れば、ピアノ曲がもっともっと深く楽しめるのではないだろうか。