ああボネガット!!
★★★★☆
スケールの大きいストーリーを
ほんのみみっちい要素でしめくくって、
ハッピーエンドにする、
そんなボネガットの離れ業が炸裂する傑作。
最初読んだ時は本当にボネガットは
これで引退するんじゃないかと思いました。
お土産にまたひとつ、笑えて泣けて考えさせられる話を、
やれやれ、って雰囲気で、やさしいおじさんが
教えてくれた。
そんな感じの、穏やかな終末ストーリーです。
あくまでSFのジャンルに入れられるのを
拒んだボネガットですが、
これを読んでウェルズの名作「タイムマシン」を
思い起こさないほうがむつかしいです。
影響されてるとか似た部分あるとか、
じゃなしに。
素敵な、本当に素敵なおじさんでした。
ありがとうボネガット!!ハイホー!!
ウイルスについての記述はなし。
★★★★★
この世界では人類は「正体不明」のウイルス
(細菌だったかな?ま、どっちでもいいか、正体不明だし)
に滅ぼされかけています。
ありきたりな話なら、トム・クルーズみたいなひとが
何故か生き残り、不可能に近いワクチンを開発したり、
ブルース・ウィリスみたいな何でも出来る人が人類の存続を守る、
みたいなヒーローの逸話で終わりそうなものですが、
最後まで読んだ個人的感想は
「えー、こんな人が生き残っていいの!?(不謹慎)」でした。
筒見康隆のようなブラックジョークが好きな人にお勧めできますが、
ありきたりなSFに慣れてしまっている人は、アレルギーが出ると思いますので、
余りお勧めしません。
まー私としてはあまのじゃく的にそういう人にこそ手にとって欲しい本ですけど。
進化論についての知識は読む際の前提ではありませんが、
既出のレビューにあるように、ボトルネック効果(創始者効果か?)くらいは
知っておいてもいいかもしれません。
科学というより笑い
★★★☆☆
「たまたま孤島に辿り着いた10人そこそこを残して人類が死に絶えました。さて100万年過ぎたらどうなるでしょう」
進化をネタにしたフィクションです。
作中に直接出てくる訳ではないけど、ボトルネック効果や断続平衡といった進化論的概念を土台に置いて話が練られています。
が、恐ろしく身勝手で極端に気まぐれな人間模様が実は本書の大半。その語り口が進化論的な皮肉に満ち満ちていて実に愉快。巨大過ぎる脳にそそのかされて滑稽に振る舞うヒトを哀れみ慈しむ。笑うに笑えない、でも笑わずにはいられない。こんな酷くて痛々しくてそれ故笑えるユーモアは他に類を見ません。
完全に偶然に左右されたそれらのどうでもいい出来事が、後のヒトという種にとって無視出来ない影響を及ぼす。
ここに本書の一番強い主張が潜んでいる様に思えます。
ただ、確かに進化論的エッセンスを盛り込んだシナリオではありますが、この物語(歴史)そのものに充分な論理的説得力を見出すのはかなり困難です。
つまり本書を読んでもあんまし勉強にはならないかと。
――えーとそれはつまり、とりあえず笑っとけばOK??
It's all right!!
糖衣で包んだ苦薬
★★★★☆
生物学的な繁殖可能限界や、遺伝病問題なども考慮に入れた上で書かれたと思わしき「生物学SF」。読み過ごす人も多いと聞いたが、多様な遺伝子を強引に残すシーンが序盤にあり、故にリアリティが出てくる。
そして、いかに「人類」が変貌するのか。予測ができたとしても、それでも魅力的な作品。
力作には違いないが
★★☆☆☆
長い長い予告編を本編にしたような作品。
ヴォネガット版「種の起源」はお馴染みのヴォネガット節に満ち溢れており、
部分的には十分楽しめるが、結局のところテーマには辿り着くことが
できない。
力作であることは間違いないのだが。