説得力のある論旨展開
★★★★★
本書は、前半140ページ程度を割いて、自治体の財政状況がいかに厳しいかについて、そして、それでも何故自治体は破綻しないかについて説明している。それは、民間企業と同様に、いかにバランスシートが悪くとも、資金供給がある限り倒産しないということ。地方交付税制度や交付税措置付きの地方債制度による国からの資金供給があり、その結果生じた交付税特別会計の赤字を財政投融資資金で埋めるという、しばしば言われる構図について、コンパクトに説得力をもって論旨展開している。
そして、後半90ページでアメリカの自治体破産法「チャプターナイン」について解説し、同様のしくみを日本にも導入すべきであると提言する。
本書全体を通じて、国が最終的には面倒をみてくれる現在のしくみがある限り、自治体に健全財政に向けたインセンティブが働かないことを説得力をもって主張している。示唆に富んだ良書である。