夕張市民の真実の姿が見える
★★★☆☆
暗い話が大半を占めるが一方で随所に夕張のアットホー
ムな雰囲気が伺えた。地元学校の畑学習や異色の公共事
業といえる夕張国際映画祭が成功したのも、この夕張市
民の温かな心があったおかげである。夕張行政は失敗し
たがそこに住む人は地元に愛着を持って精一杯生きてい
る。
「これまでは行政に頼りすぎていた。これからは自力で
やらねば。」そんな話が本書には出てくるが、理想とす
る街づくりは案外今回のような大きな失敗の先にこそあ
るのかもしれない。
今後の国政や地方自治のよい教科書に
★★★★★
夕張市の財政破綻の経緯とその後を丹念に追った本です。
当初は、市長の「箱もの」、市の「粉飾」、市議会の「チェック機能不全」を理由に国や道が「自己責任」と突き放したような態度であったのが、選挙のために態度を変えていく経過もよくわかりました。
夕張市の問題を黙認した国や道の不作為、返済の見込みが見えないのに自己破産できない自治体に融資した銀行には何のとがめもないという事実にも驚きを隠せません。
ただ夕張市だけの問題ではなく、私の住んでいる地域でも「第三セクター」での運営の破綻や利用者のほとんどいない箱ものも指摘されています。炭鉱の閉鎖といった特殊事情を抜きにしても、少子化と高齢化がともに全国一位(P.240)の夕張市の経験が今後の国政や地方自治のよい教科書となることを期待します。
マスコミの重大な使命
★★★★★
市長の暴走を止められなかった議会、市長の言いなりになっている議員を選んだ市民。道、国のここに至るまで問題を放置しておいた危機管理の不在。事実の隠蔽に荷担したと言われてもしょうがないマスコミの不作為。夕張市民にも責任の一端があることは認めるが、その無責任であったことの代償はあまりにも過酷である。本書は冷静な筆致で事実を淡々と伝えている。国民がおらがマチの行く末を考えるうえで大変参考になる本である。