ミステリー初心者の方にお勧め
★★★★☆
手軽に読める短編集なので、ミステリー初心者の方にいいのではないだろうか。
また、本格的な長編ではなく、喫茶店でちょっと読みたいときなどにもいいかもしれない。
短編集ではあるが、一つ一つの作品は手抜きされておらず、そこそこ入り込める。
個人的に好きなのは、表題作の「犯人のいない殺人の夜」。
他の作品とは少し趣向が違う感じがして新鮮だった。
悲しくて、切ない。
★★★★★
短編集で、一気に読み終わるのがもったいなくて。。。数日に分けて読みました。
最後の「犯人のいない殺人の夜」は読み返してしまいました。
あれ?あ、そういうことだったのね。って。
1つの作品を読み終わるごとに、私は悲しくて切ない気持ちになりました。
でも、嫌な感じではなくて。
トリックを知っちゃった後にもう一度読みたくなる本って、そんなに多くはない気がしますが
この作品は読みやすいし、トリックとか推理とか抜きにしても成り立つと思うので
また読みたい本として、手元に置いておこうと思います。
みなさんも、ぜひ。
それほど読み込まれていないのがもったいないと思わせるだけの、東野圭吾の短編集の最高傑作
★★★★★
東野圭吾は、長編も短編も書きこなすことができる非常に器用な作家であり、これまでの全64作品のうちには、17もの短編小説集がある。ただ、私は、これまでに、東野圭吾の全作品を読んできたのだが、彼の短編は、たとえば横山秀雄の長編を凝縮したような濃密な短編と比較すると、軽く、薄味な作品がほとんどであり、率直にいって、東野圭吾は、長編小説を読むべき作家だと思っている。
彼の短編集の中では、科学ミステリが売りの「探偵ガリレオ・シリーズ」が有名なのだが、はっきりいって、これは、見掛け倒しの物足りないものに終わってしまっているし、「しのぶセンセ・シリーズ」、「天下一大五郎シリーズ」、「怪笑小説」など、軽い感覚の短編集が大半のその他の作品中にも、傑作といえるものはほとんどないのだ。
そんな彼の短編集の中にあって、私が、彼の短編集の最高傑作と思っているのが、この「犯人のいない殺人の夜」なのである。この本は、東野作品としては、それほど読み込まれているとはいい難く、レビューの数も伸びていないのだが、そんな地味な扱いをされているのが本当にもったいないと思わせるだけの、レベルの高い7作品が揃っているのだ。
ここに掲載された7作品は、一見、読者の想定内のミステリと思わせるものが多いのだが、いずれもが、最後の一ひねり、二ひねりが効いている。特に、その中でも、「さよならコーチ」と「犯人のいない殺人の夜」は、純粋なミステリとしてだけの観点から読んでも、一級品のレベルにあると思う。また、「闇の中の二人」、「踊り子」、「白い凶器」、「さよならコーチ」、「犯人のいない殺人の夜」のラストの一文には、それぞれに別の意味で、怖さや強烈なインパクトがあるし、「小さな故意の物語」、「エンドレス・ナイト」、「白い凶器」、「さよならコーチ」では、長編でお馴染みの、東野圭吾お得意の読者の胸を打つ人間ドラマも味わえる。
犯人の気持ちや切ない心情は理解できるような短編集
★★★★☆
犯人のいない殺人の夜は、犯人は悪いのだが、犯人の気持ちや切ない心情は理解できるような短編集だったと思います。ガリレオシリーズの短編集以外では東野氏の短編集のなかでは一番いいのかなとおもいます。
小さな故意の物語:親友であり、幼馴染でもあった達也が、校舎の屋上から転落死。その真相は?犯人は縛られたくないし、そういう運命から逃れたいという気持ちかな。
闇の中の二人:私がいちばん好きな短編。萩原信二の生後3ヶ月の弟が殺された。その真相は?犯人の気持ちを考えるとどうなのかなと思う。
踊り子:中学生の孝志は新体操の練習をする女子高生に一目ぼれする。その後、その女子高生が現れなくなった。その真相は?なんか切ないなあ。
エンドレス・ナイト:大阪で単身赴任の夫が殺害された。その真相は?単身赴任の夫と妻の関係が互いに変わっていくよね。
白い凶器:同じ職場の人間が連続して不審死を遂げた。何らかの共通点があるのだが、それはなんだろうか?母の気持ちなんだろうな。
さよならコーチ:アーチェリーの有望選手が、自殺を図った。その真相は?密着している選手とコーチの関係は難しい。選手は逃げ場がないよな。
犯人のいない殺人の夜:安藤由紀子が死んだ。資産家一族は、家庭教師2人も巻き込んで、保身のために、事件それ自体を隠蔽しようと画策する。どうやってこの一族を追い詰めていくのか?ポイントは、家庭教師の拓也が握っている。意外な真相が隠されている。
表題作だけでも買う価値あり
★★★★☆
新本格推理と呼ばれるジャンルが出来てから10年以上経ちます。私も4作読みました。全てが叙述トリック物で、しかも全てアンフェアに感じられる物ばかりでした。さて、東野圭吾氏です。文庫の解説に書かれていた、氏と北村薫氏の会話では、氏が本格推理、新本格推理についてのこだわりを持っていないように話していた、とありましたが、「名探偵の掟」を読むと決してそんなことはないことがわかります。特にアンフェアではない叙述トリックというのが、氏が推理小説を書くうえでの大きなテーマであることは明らかです(仮面山荘殺人事件やある閉ざされた雪の・・・など長編でも叙述トリック物は多いと思います)。さて表題作ですが、アンフェアにならない叙述トリックの見本のような作品だと思います。しかも、短編だけによけいに鮮やかです。この作品だけでも買う価値があると思います。(他の作品も良いですが・・・)