照降町自身番書役日誌シリーズ第1弾
★★★★☆
シリーズ3冊目「虎落笛」の読了後もう一度読み直してみた。振り返るとこの1冊目でシリーズの主要人物が一話ごとに紹介されてゆく。喜三次、おゆき、武蔵、猫次屋のおたみ、佐吉、およし、おけいなどなど。このシリーズを楽しむには欠かせない1冊となっている。丁度連続テレビドラマで一話ごとに出演者が増えてゆくような感じだ。
本シリーズの特徴は、下町に生きる庶民の人情、心の機微、暮らし向きを丁寧な筆致で描いている点だ。どの話にもホロリとさせられる所がある。哀しさや嬉しさに目頭が熱くなる。文庫版時代小説としてはレベルの高い作品といえる。決して侮れない。
もう一つ、地名(町名)などに小まめに振り仮名が付いているのはありがたい。江戸の旧町名は濁るのか濁らないのか、チョウかマチかと迷いながら読むことが多い。本書は親切に振り仮名を付けて読者の助けとなっている点は特筆できる。