スポーツ選手の栄光より、その影に光を当てた傑作。
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プロ野球をあきらめて、ゴルフの道を選んだ尾崎将司。長嶋と一緒に巨人に入団した名三塁手2人のその後。求道的に打撃を追い求め、やがて忘れ去られた天才バッター榎本喜八。長距離ランナー円谷幸吉の孤独。鬼才、輪島功一の本音。そのどれもが、輝かしい時代を持つだけに、本書で書かれた事実は、悲しい。しかしスポーツ選手の光は、その悲しさがあるから~~こそ輝くのではなかったか…。
正直言って、沢木耕太郎の文体は、名文とは言い難い。しかも本書に収められたものは全て初期の作品であるため、未完成なのはなおのこと。
しかしそれでも読めてしまうのは、そこに書かれている事実の力。そしてその事実を描けているのは、「見たものしか書かない」という彼の基本姿勢のなせる技だろう。~