小説『星界の戦旗』には、前編にあたる『星界の紋章』(I~III)があり、両者を合わせて「星界」シリーズが形成されている。本書は、「星界」シリーズ全体を通史しておらず、入門書とは呼ぶのは難しいが、それでも小説世界を俯瞰できるように、「≪星界≫をめぐるエッセイ」と題した、SF評論家・大森望らの解説文や、森岡自らによる「アーヴ根源29氏族」などのストーリー設定説明などの記事を収めている。
特に、三井家、ヴェネツィア、オスマントルコの歴史や制度組織から、森岡が作品の着想を得たという、大宮信光の1文は非常に興味深いし、「星界」の世界を構造的に読み取るためのヒントにもなるだろう。また、脚本家・堺三保が、アニメ版「星界の戦旗」を話の枕に「小説(原作)と映像の相違点」について述べているが、このシリーズだけにとどまらず、広く「原作の映像化」に対する含蓄を含んでいる。
さらに、著者自身による書き下ろし短編「夜想」や、3本のシリーズ外伝短編、アニメ「星界の戦旗2」設定資料集なども多数収録されている。「星界」ワールドの裾野ががぐぐっと広がる手ごたえを感じる。(文月 達)
この本は星界の紋章読本よりも読みやすいと思います。
是非、セットで買われるとよいでしょう。