エディ・ヒギンズはトリオによる録音が圧倒的に多い人だが、これはスコット・ハミルトンのテナー・サックスを加えたクァルテット作品。このクァルテットで01年に来日しており、その時と同じメンバーによる録音だ。ヒギンズはスマートで趣味のいいプレイが身上のピアニストで、それはここでも変わらない。ただし、いつものトリオ作品ではないので、本作ではむしろ脇役に徹している感じがする。主役はテナー本来の魅力を前面に押し出し、朗々としたソロを聴かせるスコット・ハミルトン。スコットの歌心満点のソロとエレガントなヒギンズのピアノの取り合わせがまことに美しい。
選曲に関しては、最初の2曲がものすごく新鮮に聴こえる。< 1 >「メランコリー・ラプソディ」はハリー・ジェームズがドリス・デイの主演映画で演奏した曲、< 2 >「イッツ・ア・ロンサム・オールド・タウン」はフランク・シナトラの歌で知られる曲だ。この2曲は演奏されるケースがそれほど多くないだけに、毎度おなじみの曲に食傷気味、というような人にはうれしい選曲だろう。ワンホーン編成による心に染みるバラードの世界。(市川正二)