これこそ日本の真の怪談
★★★★★
根岸鎮衛「耳嚢」を換骨奪胎し原文と併載した短編怪談集。
近頃の恐怖小説は、(聞くところでは)人倫に悖る行為や場面を如何にどぎつく描写するか、という競争のようになっているらしい。より強い刺激を求める読者の要請に呼応してのことと思う。しかし視点を変えると、それは読み手の想像力減退の反映に他ならない。幽暗に怪を求めた昔に比べて、陰翳のない現代の何と味気ないことか。
その点で本書の怪異とは、もっと淡い、しかしいつまでも心に染みを残すような、どこかで現実とずれた事の成り行きである。この幽かな違和感こそが文学の良質な種子であろう。原文の密度よりは当然薄められているが、しかし噛み砕かれ飲み込みやすくなった各々の物語は初心者向きとして勧められる。過剰なまでにルビをふり、簡単な語にまで説明を付したのはそれを意識したのだろう。それだけに誤植がやや目立つのは惜しいが、作者の意図するところは十分に達せられていると考える。
個人的には「可愛がるから」がベスト。
★★★★★
掌編集なので、数編だけ読んで続きは後日と軽い気持ちで読み始めたら、ページをめくる指が止まらず、一気に読了してしまった。
正直、怖かったかと訊かれたらノーである、しかし、怖くないからといって「旧怪談」が駄作であるということはない。異界の存在を感じさせる優れたファンタジーとして読めばどれも傑作である。
DEARSは小泉八雲よりもこっちをCDドラマ化するべきだ。
旧い話。
★★★★☆
江戸時代の「耳袋」を現代風に読みやすくアレンジしたものが、本書だ。
短編の話が何編も続く。
怖い話もあれば、不思議な話もある。
少し気になった時に、ぱらぱら読んでも十分に楽しめる。
話の後に、原文も掲載されているので比較して行くのも面白い。
多くの意味で楽しめる本である。
個人的には「プライド」が、一番ゾッとした。
江戸時代版の都市伝説を読むような不思議な感覚
★★★★★
面白くて一気に読破してしまいました。オススメです。
意訳:ただの現代語訳ではなかったです。京極さんが現代の人にも分り易くなるよう
噛み砕いて書いてくれています。行間まで訳すような感じで機微に注意を払った訳でした。
それに「耳袋」らしくアレンジも加えてあります。江戸時代、巷の噂話は
こんな風に各々アレンジや解釈を加えられ広まったのかもしれませんね。
心情:ずっと、昔の人は迷信深いのだろう・・不思議なことは全部妖怪のせいにしてたりするのでは?
という妙な偏見があったのですが、それも霧散しました。今も昔も十人十色の反応ですよね。
変な現象にあっても豪胆かつ理論的だったり泰然としている昔の武士がカッコよく感じました(笑)
確かに古典の時間に習った侍の中にはアヤカシを切って捨てるような剛毅な人もいました。
見落としていたことを再認識した気分です。
細かい:私なんかが古典を読んでいると当時の人には違和感なく理解できた部分でも
「なんでこんな反応を?」「なぜそこでそう返す?」と現代の私たちとの認識、文化の差から
理解しにくい場面が多くあります。でも京極さんの意訳はその「?」の部分を補佐してくれていました。
江戸時代の人たちを身近に感じることができる作品でした。ぜひ他の古典も訳して欲しいです。
*私には「どすん」「座頭でないなら」が怖かったです
そしてプライドは、町人と侍の物の見方の違いがどこまでも悲しいお話でした。
丁寧にお礼を言っている様子からもわかるように別に身分の低いものを
見下す意識はなかったのでしょう。ただ餅売りには、そう見えてしまったのでしょうね
武士は食わねど高楊枝は曽祖父の口癖でした。思えば彼は明治の人でその父親は侍でした
自分には理解できない思想でしたが最近はどうにか想像できるようになってきました・・。
こんな怖さがあったのか、と思わせる本でした
★★★☆☆
耳袋から、35個の話を現代語訳したものです。
訳での物語りが完結したあとに、原文ものっています。
単に現代の言葉に置き換えてるだけではなく、その雰囲気や舞台が伝わりやすいような言葉の選び方(意訳?)がしてある本でした。
いろいろな怖さが楽しめる本です。
「あの世の怖いものに呪われる、殺される」「気持ち悪い〜」以外にも「不思議な怖さ」「意外性の怖さ」など、いろいろな「怖さ」が楽しめる本です。
ホラー映画では、味わえない、読む「怪談の怖さ」が味わえる本でした。